でんぱ組.inc「GOGO DEMPA」

GOGO DEMPA(通常盤)

GOGO DEMPA(通常盤)

 

[Japan, Idol]

 

01.GOGO DEMPA
02.破!to the Future
03.ファンファーレは僕らのために
04.惑星★聖歌 ~Planet Anthem~
05.STAR☆ットしちゃうぜ春だしね
06.アキハバライフ♪
07.おつかれサマー!
08.永久ゾンビーナ
09.アンサンブルは手のひらに
10.きっと、きっとね。
11.Dem Dem X’mas
12.ムなさわぎのヒみつ?!
13.キボウノウタ
14.ユメ射す明日へ
15.あした地球がこなごなになっても

 

でんぱ組.incの4thアルバム「GO GO DEMPA」を聞いた。内容的には古参も新規も満足するようなアルバムとはなっていないと思う。バンドサウンドへとシフトしたこのアルバムは、多ジャンルを高速でクロスオーバーさせたいわゆる電波ソングとしての力を弱めてしまった印象は否めない。
彼女たちなりのEDM「惑星★聖歌 ~Planet Anthem~」や、車谷浩司 (Laika Came Back、ex-AIR) による「アンサンブルは手のひらに」など音楽ファンをターゲットにした楽曲もあるものの、期待値を上げすぎたというのが正直なところ。しかし、冒頭の3曲を聞くためだけでもこのアルバムを手に取る価値はあると言いきってしまってもいい。

 

でんぱ組.incはアイドルシーンへの入口的存在とされてしまったなと感じる。彼女たちをきっかけとして他に主現場を見つけた人が大半で、いまだにでんぱの現場へと行き続けているのは2,3割程度といった印象。次々に活動の幅を広げていく彼女たちの活躍を横目に、前は音楽的にもコンテンツ的にもあんなにおもしろかったのになーと言いそうになるのを堪える。
今のアイドルシーンは音楽ファンを唸らせる楽曲や製作陣を武器にしたグループがあまりにも増えすぎていて、楽曲の良さだけではおもしろみに欠けてきている。隙間産業的に手がつけられていないジャンルを取り上げ著名なアーティストを作曲に招き…という流れは正直飽きてきた。楽曲が良いというのは今となってはローコンテクストだ。アイドルとして替えのきかないハイコンテクストさ (人間性やストーリー性) が再度重視されるようになってきている。このアルバムの冒頭3曲は、ハイコンテクストさという意味で本当に完成されている。

 

和風ファンクなイントロ「GOGO DEMPA」から高速ピアノロック「破!to the Future」へとなだれ込む。もしコレがほしいのならばどうぞあげるもういらないわという過去との決別宣言は、でんぱ組っぽいと形容されるサウンドとの決別であるとともに、W.W.Dが必要ではなくなったことの表明でもある。
それに続く「ファンファーレは僕らのために」が本当に素晴らしい。明るい未来が待っているよと背中を押す彼女たちに対して、根拠のないメッセージだと切り捨てる人がどれだけいるだろうか。各々の背景を共有してきた彼女たちが歌うからこそ言葉の重みが増し、アッパーなのにも関わらずエモーショナルさを感じさせる。夢を夢で終わらせなかった彼女たちが、夢を夢で終わらせてしまいそうな誰かの背中を押す。現在の彼女たちが歌うべきなのはそういう歌なのだろう。

 

2ndアルバム「WORLD WIDE DEMPA」を聞いたときに、彼女たちの夢が夢のままで終わるのかどうかを見届けたいと書いたことがある。夢を夢で終わらせない重さ、批判を恐れず新しいことにチャレンジし続ける重さ、メンバーを変えずに活動を続ける重さ。彼女たちを入口として他のアイドルへと現場を変えた人にこそ、その続けるということ の重みはずっしりと響くはずだ。