Sol (Local Distance pt.2)

小さくも大きくもない、ひとりで生きるには退屈な街だなと思っていた。フリースタイルダンジョンやシティポップすら知らない人がざらにいる街。この街にはぼくが求めているものがなにもないから、特に惹かれる訳でもないイベントに行って、特に話したいことがある訳でもない友達を誘っていくつもの夜を使いはたしていく。

身近に行きたい現場がないから、インターネットで今一番おもしろいと言われているものにだけは乗り遅れたくなかった。TLに流れてくるトレンドをチェックして、written by 誰かの真似したまとめ記事でも書けばそこそこバズったりもする。オンラインで繋がった顔の知らない誰かとはこの視点を共有できることが救いだった。ないものがない東京へ行けば数えきれないほどの現場があるし、ありがたいことにオフラインで繋がる人も増えた。みんな口を揃えてこっちに来ればいいのにと言ってくる。愚痴になっちゃうがあそこは遠い。Local Distanceで歌われていることはあそこに住んでる人にはわからない。
地方じゃ無理かもとわかりつつ、すべて東京の現場に奪われることもわかりつつ、まだ誰も手をつけてないものを探し続けた。これおもしろいよとオンラインで言い続けたシーンが、東京へ行けば誰か知らない人のものになっている。その繰り返し。いつの間にか音楽は共有するために消化するものへと変わり、自分で絶賛したものすら思い出せない。そこに一生涯愛せるものはなにもなかった。少しインターネットから距離を置けば地方コンプレックスが和らいだ気がした。

小さくも大きくもない、ひとりで生きるには退屈な街だなと今でも思っている。惹かれる訳でもないイベントに行き続けていたら、この街でも同じ方向を見ている人と出会うことが増えた。イベンターやDJに運営などなど、ここじゃ難しいよねと同じことを言いつつ、少しでも距離と距離を埋めるために動こうとしている。最近ではそこに微力ながら携わることも増えてきて、やっぱり地方じゃ難しいと改めて思う。いずれ地方の時代が来るという。ほんとにそうならいいのにね、という言葉は以前とは少しニュアンスが変わったように感じる。
相変わらず好きな音楽の話をしながら好きな音楽で踊ってる。オンラインでも。オフラインでも。東京がうらやましいという思いは少しだけ弱くなった。この街で生きるのも悪くはないかなと少しだけ思ってきた。人生が少しだけ進んだ気がした。