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Sol (Local Distance pt.4)

パーティーは終わった。音は止まった。ぼくの一番だと思っているものが目の前で終わってしまった。大阪に行く理由も東京に行く理由もなくなってしまった。これほど没頭できるものに今後出会えるのだろうかとか、思い出の後ろで流れていた曲をもう素直な気持ちで聞くことができなくなるのかとか。終わってしまったのにも関わらず改めて本当に好きだなって、これが一生涯愛せるものなんじゃないかなって気づいてしまったことが本当にしんどくてたまらない。

だから今日だけは戻らない日々を思い出して笑おう。行ったことのない街で名前も知らない人と同じものを追いかけた日々は本当に楽しかった。年齢も出身地もバラバラな人たちと酒を酌み交わし、約束せずとも再会する不思議な関係。素晴らしい楽曲とステージ。いつしか彼女たちの存在がすべての行動のきっかけとなっていた日々は本当に刺激的で尊いものだった。ヤシの木を見ずとも、思い出は生活のそこかしこに降り積もっている。彼女たちと出会ってからの数年間は最高に楽しかった。

過ぎてしまったことはもうしょうがない。それぞれがそれぞれの住む街へと、それぞれの日常へと帰っていった。初めから何もなかったかのように世界は回っていく。昨日から降り続いていた雨も上がり、まだ肌寒いけれどもうすぐ春が訪れる。それまでとはまったく違った新しい春が。
あの子の夢が終わったとしても、あの子がもう人前で歌うことがなくなったとしても、この夜が終われば二度と会うことのない人がたくさんいるとしても、生活は続く。人前で歌うことが夢だったと語っていたあの子はまたステージに帰ってくるのだろうか。ステージから降りることを選んだあの子は新しい人生を見つけられるだろうか。自分のことのように彼女たちの夢を追いかけていたあの人たちは新しい何かを見つけられるだろうか。
飛行機がぼくの住む街に着く。小さくも大きくもないひとりで生きるには退屈な街に。また明日からいつも通りの日常が始まる。遠征の疲労を感じながら出勤するのもこれが最後かもしれない。それぞれの生活は続く。過去に名残を、夢に続きを。止まった時間の先に未来を。さて、どう生きようか。