Memo.88 (2018 Best Tracks)

50.SHIMPEI「ONE (feat. RAq)」
[Japan, HipHop]
徳島のラッパーSHIMPEIが昨年リリースした「BACK LANE EP」のレーベル特典として収録されていたRAq参加リミックス。久々な感じもするRAqも相変わらず独自の達観した視点でラップしSHIMPEIもらしさ溢れるフラストレーションを不器用に打ち明けた歌詞を綴る。さらにMUDDYTHUMBのサンプリングビートで涙腺を刺激してくるという特典にしておくにはもったいない一曲。正式には2017年リリースなのでこの位置に。


49.HakobuNe「kurenai (feat. 次郎(仮名))」
[Japan, HipHop]
フリーで公開されたトラックメイカーHakobuNe久しぶりのアルバムから盟友の次郎(仮名)をフィーチャーしたアルバムラスト曲。おそらくブランクがあるだろうに全編が次郎らしい重いパンチラインで埋め尽くされる。"かつては三擦り半で暴発した感受性は とんと機能しなくなり、勃たない中指 投げやりの飛距離なら自己新を記録したが 輝いた白紙は濁すには清すぎた…" なんてラインは次郎にしか書けない。


48.MØ「Nostalgia」
[Denmark, Electronic/Pop]
Major Lazer & DJ Snake「Lean On」やDiplo「Sun In Our Eyes」にフィーチャーされたことでも知られているデンマークの女性SSW MØ (ムー) の最新アルバムから。トロピカルテイストなサウンドに乗る特徴的なハスキーな歌声とスケール感あるフックが印象的な一曲。


47.Andup「Yay Yay (feat. O'nut)」
[Korea, Pop]
SMTM4でのアイドルラッパー批判でも知られているラッパーAndupの最新シングルから。同作収録の「Wait a sec」の方が話題を呼んだが、ダンサブルなこちらの方が個人的にお気に入り。終盤のアウトロ的展開も良い。


46.PAELLAS「Weight」
[Japan, Indie]
never young beach阿南智史を擁していることでさらに注目を浴びている東京の5人組パエリアズ最新シングル。WONK江﨑文武をゲストに迎えたこの曲は今までにないほどキャッチーに振り切ったミディアムバラードに。メロウというよりは歌詞やメロディ含めJ-Popバラード感が強く、大きく殻を破ったように感じる。次の一手がどうなるか楽しみ。


45.DREAMCATCHER「Wonderland」
[Korea, Pop]
Dal Shabetの所属するHappy Face Entertainmentの7人組による最新EP「Alone In The City」から。韓国では珍しいバンドサウンドを大きくフィーチャーしたグループなことでも知られているが、現行R&Bをうまく取り込みしっとりと展開するこの曲が話題に。コンセプトからは外れるが作曲陣 (Ollounder/LEEZ) のこういう方向性ももっと聞いてみたいので別ユニットを作ってもいいのでは。


44.SG Lewis & Clairo「Better」
[UnitedKingdom, Electro]
ボストン20歳の人気宅録SSW ClairoとロンドンのSG Lewisによるコラボ楽曲。今までのClairoでは聞けなかったような、ヒップホップ/ファンクをベースにしたトラックに、それに合わせ歌声もどこか大人びたドリーミーな一曲に。これもよくクラブでかかっていた。


43.TENDOUJI「Kids in the dark」
[Japan, Indie]
SXSW出演でも話題の東京インディ愛されバンドTENDOUJIの3rd EP「BUBBLE POPS」から。ローファイ感あるゆるっとしたサウンドで愉快に踊れるこの曲も良いし同シングルに収録されていた「June song」のようなミディアムチューンも素晴らしくて泣きそうになる。早朝5時から長尺のライブをやってのけたサウクルでの愛されっぷりも微笑ましかった。


42.TOCCHI「これだけで十分なのに」
[Japan, Pop]
北海道のシンガーによる1st「Life Records」から。唾奇がピックアップしたことでも話題だが、歌とラップを行き来しながら歌われる "足るを知る" メッセージは普遍的な内容ではあるもの今の時代に聞くと改めてフィットする。ラップをベースとしつつ自由な歌唱法で表現するシンガーが増えたのも今年のおもしろい傾向。


41.Sik-K「Skip and Kiss」
[Korea, HipHop]
GroovyRoomプロデュースのSik-K最新シングル。若干マンネリ感あるこの組み合わせではあるが、珍しくアコースティックなギターのワンループを持ってきたと思えば、Sik-Kが途中からもろPost Maloneなスタイルで歌い始め、フックでADM化するというパンチある一曲に。韓国お得意ある程度咀嚼した後独自の路線に走りだすっていうのがGroovyRoomにも当てはまるのかとちょっと笑ってしまう次はどこへ向かうのだろう。


40.Aiobahn「過ぎゆく日と君へ (feat. Nayuta)」
[Korea, Electronic/Pop]
Yunomiとのコラボでも知られている韓国のプロデューサがSSW/声優のnayutaをゲストに迎えた一曲。Aiobahnお得意の和テイストなシンセに、nayutaによって綴られる青春マンガのようなストーリー。さすがにこれは胸に来る。


39.Shurkn Pap「Sweet dreams」
[Japan, HipHop]
いろいろと話題を呼んでいる姫路の8人組クルーMasionDeのラッパーShurkn Pap (手裏剣パプ) の最新EPから。関西はTrapが主流ではあるものの好評だった「Road Trip」をさらにファンク寄りに掘り下げた気持ちいい一曲。誰が言っていたか忘れたがヤンキーがファンクを歌うと鳴りが違う。そしてその風貌から予想できないかわいい歌詞にやられる。

Sweet dreams

Sweet dreams

  • Shurkn Pap
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

38.MONEY MAKER「Good Life (feat. SHIMPEI, 3ISLE, YUNGYU)」
[Japan, HipHop]
MC松島やWeny Dacilloなど豪華ゲストを迎えたマニメカのフリーアルバムから。先述した徳島のラッパーSHIMPEIはこの手のテーマでラップさせると間違いないし、お久しぶり札幌の3ISLEもバイリンガル時代のSEEDAを彷彿とさせる高速ラップが相変わらずクール。haruru犬love dog天使の客演も話題だったYUNGYUも安定のコミカルなフロウでニヤニヤさせられる。ここらへんのネット出自のラッパーはほんとおもしろいので大集合するイベントやってくれないかなと。


37.MGF「湿った夜の儚き嵐 (feat. Kan Sano)」
[Japan, HipHop]
ROSE RECORDSから離れ自主レーベルから5曲連続でシングルをリリース中の3人組MGF。人気シンガーKan Sanoをプロデュースとフックに招いたチルアウトチューンは、メロウなトラックやフックとは対照的にオールドスクールなラップを乗せる3人のギャップがおもしろい。リリース済みの「Dancing On The Moon」や「Suicidal Season Dream」などすでに良い曲が揃っているし来年は久しぶりのアルバムも期待。


36.The Black Eyed Peas「CONSTANT Pt.1 Pt.2 (feat. Slick Rick)」
[UnitedStates, HipHop]
結局脱退したのかよくわからないファーギー不参加の8年ぶりBEP最新作から先行カットされた一曲。スリックリック参加ということでお得意オールドスクール路線かと思いきや、現行ソウル寄りのチルいサウンドから後半にいきなりBPMを上げてハウスへシフトする展開にぶち上がり。そういえばCLが加入って噂もあったなとか。


35.Hinds「New For You」
[Spain, Indie]
今年FUJI ROCK FESTIVALにも出演したマドリードのガールズバンドHinds (ハインズ) の2nd「I Don't Run」から。マドリードのバンドらしく楽しそうにサッカーをするだけというMVもおもしろいし、時代を完全に無視した下手うまなローファイサウンドを響かせてくれていて最高。


34.Tajyusaim boyz「リボで買う。」
[Japan, HipHop]
ゆとり世代型多重債務者集団1stシングル。グループ名もタイトルも出オチ感がすごいが、口ずさみたくなるフックとちゃんと曲として一定のかっこよさを保ちつつ "気にせずに吹かす煙草もリボ 俺は少しずつ燃やす希望" とかで踏むしょうもない感じが最高。WAVYでごめんねのようなバイラルヒットになるかと期待していたけれど思いのほか伸びず。まだまだ彼らのリボ払いは続きそう。


33.IO, Yo-Sea & 3House「Keep It Real」
[Japan, HipHop]
沖縄のクルーSouthCatのレーベルAOTLのコンピ「X-FACTOR」からKANDYTOWNのIOとのコラボ楽曲。彼らの特徴ともいえる浮遊感あるビートと、軽くオートチューンがかった心地よいメロウなラップの相性が抜群。「Dejavu」もバイラルヒットし、一気に来年ブレイクが期待されるクルーに。


32.wetter「Hello Sunshine」
[Korea, Alternative]
デビュー曲「who」が話題となっていた韓国の4人組バンドwetterの最新EPから。ブラックミュージック寄りのサウンドだった前作とは異なりMV含めUSインディ感ある仕上がりで (特に韓国においては) オルタナティブな方向へシフトし大成功。vo.チェ・ウォンビンのビジュアル含めかなり日本人好みなので次作で一気にブレイクか。


31.ヱスケー「家がいい (feat. K.H. BROTHERS)」
[Japan, HipHop]
TOKYO TOGARI NEZUMI所属、北海道のベッドルームラッパーによる初フィジカルアルバムから自身がリーダーを務めるK.H. BROTHERSをフィーチャーしたインドア賛歌。家でYeahっていう単純なネタ曲かと思ったら相変わらずメガネはワードチョイスがおもしろすぎるし、ラスト "目の前のものでどこまでも遊べ" は足るを知るテーマの曲でもなかなかの秀逸なライン。


30.YMG「Go Crazy (feat. WILYWNKA, FARMHOUSE & 唾奇)」
[Japan, HipHop]
タイプライターとの連名アルバム「LA LA PALOOZA」も話題を呼んだYMGの1stアルバムから。今どんなビートに乗せても一人勝ちする唾奇ではあるが ("世間は他人の世話で忙しい 人の皮着た化け物政治家 街のギャルやらヲタクや根暗 どれを取ったって平等に狂ってるのさ" ってラインとか本当に素晴しい)、ここでは得意のファストなフロウにメッセージ性あるラップを乗せてきたFARMHOUSEと五分五分の勝負といったところ。このメンツにFARMHOUSEを参加させるという珍しい組み合わせもプロデュースアルバムの醍醐味。


29.A$AP Rocky「A$AP Forever (feat. Moby, T.I. & Kid Cudi)」
[UnitedStates, HipHop]
フラッコ氏がWIRED MUSIC FESTIVALの出演をキャンセルしてまで (?) リリースしたアルバム先行曲。Moby「Porcelain」まんま使いのビートと後半の転調が気持ち良すぎて悶絶するこれはWIREDキャンセルも許してしまうレベル。Drakeの「Nice For What」も大ネタ使いで後半に転調が入るという同じ手法で作られていてトレンド化するかと思いきや特に続かず。


28.Jay Rock, Kendrick Lamar, Future & James Blake「King's Dead」
[UnitedStates, HipHop]
ブラックカルチャーを押し出し話題となったMARVEL映画「Black Panther」サントラからの先行シングル。Futureの "La di da di da~" が地味に流行ったり後半の転調で無敵モードに入るKendrick Lamarなどトピックスが詰め込まれた一曲。個人的にこの曲で2018年が始まった。


27.CBS「Stay Up All Night」
[Japan, HipHop]
マイペースな活動を続けていたPistachio Studio所属のラップグループCBS最新曲。メンバーでもある%CがchelmicoやOMAKE-CLUB周辺で活動していることも影響してか、ビートはCBSらしいジャジーなテイストを保ったままフックでは珍しく歌っていたりとキャッチーに振り切り新しい一面を感じさせた。昔からフリーで楽しませてもらっているだけにもっと多くの人に届いて欲しい。


26.ハッピーくるくる「グリーングリーン
[Japan, FutureBass]
Yunomiがサウンドプロデュースを手掛ける2人組アイドルによる配信限定シングルから。Yunomiと言えばKawaii Future Bassのイメージだがこの曲では珍しくアコースティックギターから入り唐突にBrostepな展開を入れるなどFuture Bassの次を模索するようなサウンドに。さらにそこにYunomi特有のファンタジックでエモーショナルな歌詞が綴られる。しかしその後メンバーチェンジを経て12月に解散。楽曲が素晴らしかっただけに残念。


25.EXID「Lady」
[Korea, Pop/NewJackSwing]
毎回楽曲的に楽しませてくれるEXIDが新曲で取り入れたのはNew Jack Swing。これまでも韓国ではKirinを筆頭に一部でNJSが流行り続けていたけれど、「Finesse」の影響もありここぞとばかりにビジュアル含めNJSを押し出したこの曲で大きなトレンドへと持ち上がった。……と思いきや下半期ではまったくNJS曲が現れず一過性のものだったようで残念。


24.IZ*ONE「La Vie en Rose」
[Korea, Pop]
PRODUCE101と48グループの日韓共同企画PRODUCE48改めIZ*ONE (アイズワン) のデビューEPから。日本からは宮脇咲良本田仁美矢吹奈子が選ばれ48グループでの活動を一旦休止することになったのも話題だが、オーディション時点から評判の高かった楽曲も相変わらず◎。トロピカルハウス/EDMを軸に現行K-Popらしくキャッチーに展開するサウンドはここまでお膳立てされた彼女たちのハードルを軽く飛び越えるものになったが、チャートアクション的にはすぐTWICEに一蹴されてしまったのが少し気の毒。


23.週末CITY PLAY BOYZ「First Love CCS Remix」
[Japan, HipHop]
デザインチームCheap Cheese ShopやFWISでの個展も話題を呼んでいるpen public擁する福岡の4人組ラップグループによる宇多田ヒカル同曲リミックス。まんま歌うだけのネタ曲かと思いきや2verseでのビートチェンジがクール。ノリでFirst Loveのアパレルまで作るクリエイティブさもおもしろい。予想通りOMAKE-CLUB所属となり、DJのBunny BeatsはJBFCのNOLOVソロにも参加したりバンドシーンとの繋がりもあったりと幅が広がりおもしろくなってきた。


22.Mom「夏の魔法 '18」
[Japan, Pop]
ラップと歌の間を行くスタイルでかっこよさとキュートさを共存させたクラフト・ヒップホップを提唱する21歳のシンガーMom (マム) のデビューアルバムから。うだるような暑さにうんざりしながらも、日常の風景がどこか違ったようにみえてしまう夏の魔法をテーマにした心地いい一曲。今後かなり期待できる才能なだけにはやくサンプリング問題をクリアして次のアプローチをみせてほしい。

夏の魔法'18

夏の魔法'18

  • Mom
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

21.LambC「Turnin' (feat. Se.A)」
[Korea, Soul]
期待の韓国インディバンドのレムシによる最新シングルから。毎回外さない彼ららしく今回も女性SSWセアとの絡みもありつつ特筆することもなくただただ気持ちいい一曲に。昨年からコンスタントにシングルをリリースしていて本作で4枚目なのでぼちぼちアルバムも期待したいところ。K-Popが世界的なムーブメントとなっている今、先述したwetter含めオルタナティブK-Popにも注目が集まって来ているので、ヒョゴに続き誰が頭を出すのか楽しみ。


20.PRODUCE 48「PICK ME」
[Korea/Japan, Pop]
IZ*ONEも素晴らしいがやはりこの曲が印象に残っている。人気オーディション番組PRODUCE 101の第3弾として48系グループの参加が発表されやや不安が上回る中発表されたお披露目曲で一気に評判がひっくり返ったのは印象的。耳に残るフレーズ作りとフックのきいたサビはさすが韓国という感じがするが、サビ後の展開はJ-Popテイストを取り入れたようにも感じる。個人的には2番から日本語になる構成がツボだったのでそのバージョンが未収録なのは残念。センターのHKT48宮脇咲良は韓国でも大きく注目を集め、日本のヲタクが韓国のアイドルへ興味を持つきっかけにもなるだろうしかなりWin-Winの企画に仕上がっててさすが秋元康と言わざるをえない。


19.Age Factory「million」
[Japan, Alternative]
奈良の3人組バンドによる最新アルバム「GOLD」からMVにもなったこの曲。オルタナティブロックの範囲では収まらないニュースクール的叙情さも感じるし、清水エイスケの癖のある歌声が耳に残る。日本においてもこれほどまでにブラックミュージック全盛期となった今、彼らのようなロックバンドがおもしろくならない訳がないし、ただのジェネリックものが蔓延る日本の音楽シーンは茨の道だろうが構わずイキりながら進んでほしい。


18.GEZAN「DNA」
[Japan, Alternative]
Campanella、OMSBをフィーチャーした「BODY ODD」も話題を呼んだ下山の最新アルバムから。フロントマン マヒトゥ・ザ・ピーポーの世捨て人感ある風貌や彼が生み出す作品 (ラップアルバムからZINEなど)、レーベル主催の全感覚祭の大成功含め下山がやることすべてに時代が着いていっている感覚を味わったこの一年。今の時代の中では異物感があると自虐しつつも、反骨精神を隠さずに吐き出す少し人間離れした視点の歌詞もそうだろうし、聞けば聞くほど彼らは現代のヒーローなんだろうと思わされてしまう。そしてライブはこの100倍かっこいい。


17.fromis_9「Coloring」
[Korea, Pop]
Heize、Davichiなどが所属するStone Music Entertainmentの9人組グループfromise_9 (プロミスナイン) の最新シングルから。The K-Popメソッドでキャッチーに仕上げたリード曲「Love Bomb」のインパクトも強かったが、同シングルに収録されたこの曲でノックアウト。Saturday In The Park歌謡を現行アップデートしたサウンドと後半のアッパーな展開は韓国らしい節操ない手法で作られていて素晴らしいの一言。


16.AmPm「This Mess (feat. Michael Kaneko)」
[Japan, Electronic]
国内ではほぼ無名のままSpotifyで数千万再生されたことや、Galantisの来日公演サポートなどで注目を集める覆面クリエイティブユニットAmPm (アムパム) のシングル。トレンド感あるFuture Bass以降のビートと盟友ともいえるSSWマイケルカネコによる甘い歌声が気持ち良い一曲。もう10枚目のシングルなのにアルバムという形式でリリースを行わないのもSpotify世代的な戦略か。


15.BIM「BUDDY (feat. PUNPEE)」
[Japan, HipHop]
THE OTOGIBANASHI'SのラッパーBIM初のソロアルバムからレーベルメイトPUNPEEをフックに招いた一曲。OTG'Sではやらないような煌びやかなビートに乗せるBIMのラップも心地よいがなんと言ってもPのメロディセンスが間違いなさすぎる。OTG'Sらしさというものが固まっていたこともあるが、外部ゲストを呼び多彩な楽曲を収録したアルバム「The Beam」は予想以上にクオリティが高く驚いた。「Bonita」もフロアヒットし、某DJがかけまくっていたこともあり福岡でも毎回合唱が起きるような定番曲に。


14.夢みるアドレセンス「プラスチックガール」
[Japan, Pop/Electronic]
ティーンモデルを揃えた圧倒的ビジュアルレベルの高さで人気の夢アドのシングルから。ねごと蒼山幸子によるFuture Bass感あるキュートな一曲はカップリングにしておくにはもったいないクオリティ。既存のFuture Bassのような騒がしさやジャンク感を排除しポップスとして上品に仕上げる手腕に拍手。この曲やハンブレッダーズ ムツムロアキラが手掛けた「メロンソーダ」など、楽曲寄りに攻めるスタンスも素晴らしいし京佳はかわいい。


13.Lil So-Ya&microM「長濱ねる」
[Japan, HipHop]
塩山の残党のメンバーmicroMとカメラマンのLil So-Yaによる長濱ねるラップ。ヲタクがレペゼン五島列島欅坂46長濱ねるの写真集をみながら公園でねるねるねるねするだけっていうMV。長濱ねるの語感がTrapに合うというのも発見だしmicroMは他にも「アユニ・D」という曲を出していたりするストレートっぷりも含めて最高。山梨にstillichimiya以外でこんなのがいたのかと。先述した「リボで買う」なども含めこういった曲がバズってブレイクにつながるシーンになってほしい。


12.桜エビ~ず「灼熱とアイスクリーム」
[Japan, Pop]
12ヶ月連続リリース中のスタダ所属桜エビ~ずが7月にリリースしたデジタルシングルから。00年代オルタナ邦楽ロック的なテクニカルな展開にどJ-Popなメロが乗っかり、未完成な声で歌われる10代の夏休みを凝縮したような甘酸っぱい歌詞が最高すぎる (キャラメル・バニラ~の下りが本当に甘酸っぱすぎる……)。他のシングルもHave a Nice Day!やアカシックなど癖のある人選で揃えているので今後のリリースも楽しみ。


11.ロースケイ「かなり恋っぽい (feat. アベカワ)」
[Japan, Pop]
プロデューサー/シンガーのロースケイとアベカワの最新コラボ曲。思わず心踊り出したくなるサウンドに男女ボーカルの甘酸っぱいかけ合いまで含めかなり恋っぽい一曲。「FRIDAY」「ある日の窓辺」などの曲も後追いで聞いたがどれも愛しくなる楽曲ばかり。1000000回は再生されて欲しい。


10.PLT「Hocus Pocus」
[Korea, Pop]
Kei.GやBTSの楽曲製作にも関わっているJuneらソロアーティストが集結したレーベル名義コレクティブPLT (プラネタリウムレコード)のシングル。現行トレンドを盛り込んだようなビートとキャッチーなフックも素晴らしいし、それぞれがソロアーティストであることもあり自らのスキルを見せつけるように展開する各々のパートもおもしろい (個人的には後半でかっさらっていくVillainが好み)。期間限定ではなく各々の才能をぶつけたグループとして長く続けていってほしい。


09.Refugeecamp「Blooms on the groove (feat. SALU)」
[Japan, HipHop]
MC松島やJazadocumentが所属していることでも知られている札幌のクルーRefugeecampによる2nd「Always from here」から。SALUとFRAMEの2名によるメロウチューンは、ワンループのキーボードが印象的なビートも両名のラップも本当に心地よく、MC松島とともにFAKE IDというグループを組んでいたという背景も踏まえアルバムを締めるに相応しい一曲となっていた。SALULDHに所属したり古館伊知郎とコラボしたりと不安にさせられるアプローチも多いがこういった素晴らしい曲を出されると何も言えなくなる。


08.TENG GANG STARR「Dodemoii (feat. Masayoshi Iimori)」
[Japan, HipHop]
話題の男女2人組ラップユニットTENG GANG STARRの1st「ICON」から。TREKKIE TRAXのMasayoshi Iimoriのアッパーなビートにフラストレーションをぶつけたラップ、デッドボールの嬢を出演させたMVやバックボーンの危うさなどトータル的アプローチのおもしろさが際立っていた。サマソニでYonYonがこの曲をかけてフロアを異常なくらい盛り上げていたり、Shin-Jukeではモッシュが起きるほどの盛り上がりを見せたりと現場での熱量の違いが印象的だった。癖のあるスタイルから賛否両論ある彼らだが、avengers in sci-fiの新譜にも参加とシーン外での評価も上がり来年はさらに活動の幅を広げそう。


07.ものんくる「夕立」
[Japan, Jazz/Pop]
ジャズポップユニットものんくる初のセルフプロデュースアルバム「RELOADING CITY」から。菊池成孔の手を離れたことも影響しているのか、ものんくるらしさを残しつつもかなりキャッチーに振りきりCMやドラマの主題歌になっても何も違和感ないところまで昇華した普遍的なラブソングに。tofubeatsリミックスやポルノグラフティカバーなどトピックスに溢れたアルバムを引っさげたリリースツアーとして福岡まで来てくれたライブも素晴らしく、相変わらず吉田沙良の化け物っぷりに鳥肌が立った。

夕立

夕立

  • provided courtesy of iTunes

 

06.DJ RYOW「all green (feat. 唾奇)」
[Japan, HipHop]
名古屋のDJによる10thアルバムから。多作ながら毎回素晴らしいラップを乗せる唾奇だがその中でもかなりベストな内容になっている。こちらは異常なしという意味のオールグリーンという言葉を、過去を振り返りつつ今の自身を取り巻く状況と被せて、俺は大丈夫だから心配すんなと地元の仲間に投げかける歌詞が胸に来る (それでも普遍的な内容ではなくLSDとかシャブとか出てくるのが彼らしくて笑える)。早回しゴスペルなトラックも良いし、アルバムも硬派な現行ラッパーを大集合させ、トコナメ疑似共演まで含めてかなり充実した内容だった。


05.ゆnovation「ある程度ある」
[Japan, Pop]
072北摂在住のトラックメイカー/鍵盤ハーモニカ奏者がパーフェクトミュージック内レーベルAir the rooMからリリースしたEPより。「生活者の声」で彼女と出会ったこともあり現代の等身大なリリシズムに魅力を感じていたが、この曲では「Local Distance」~「SHOPPINGMALL」に続く地方とインターネットのフラストレーションを言語化した素晴しい一曲に。ないものがない都会ではなく、ある程度ある地方で生きるということをある種の覚悟とともに描く。住む場所は違えど同じく地方在住者として強く心に残った一曲。


04.Mahalia「I Wish I Missed My Ex」
[UnitedKingdom, Soul]
デビュー曲「Sober」が話題となりBBC Sound of 2019にも選ばれた注目のシンガーによるシングル。ゴスペルライクな入りで始まり後半に入ってくるサックスまで、Chance The Rapper/Brasstracks以降のテイストを咀嚼して大ヒット (某DJのせいで福岡でも毎晩のようにかかっていた)。今年はUKアーティストが大活躍の一年だったが、彼女やElla Maiを筆頭にUKソウルは来年さらに飛躍しそう。


03.Taeyoung Boy「Ain't nothing (feat. Friday Night Plans)」
[Japan, HipHop]
4月にDroitteとの「SWEAR」をリリースし8月にはEP「GIRL」をリリース、客演でもKMやDJ CHARI & DJ TATSUKIのアルバムに参加と多作だったテヤングボーイ。器用すぎるが故にテクニカルなアプローチばかりしていた彼だったが、話題のシンガーFriday Night Plansをゲストに迎え "夏と共に終わる恋" をテーマに作ったら、最高に切ないメロウチューンができてしまったという感じか (MV化されていないのが本当に納得いかない)。スムースなラップも良いしニートtokyoのインタビューでみせるキャラクターやビジュアルも申し分ない (良い意味での節操無い感じはH1GHER MUSICに入りたいと公言していたところからも窺える) ので本当にはやくブレイクして欲しい。

Ain't nothing (feat. Friday Night Plans)

Ain't nothing (feat. Friday Night Plans)

  • Taeyoung Boy
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

02.ザ・おめでたズ「サマーフリーズ (feat. 愛わなび)」
[Japan, HipHop]
富山県を拠点に活動するクリエイター集団ザ・おめでたズによる最新シングル。 "かき氷の日" がテーマの、久しぶりに集合したいつものメンツでじゃれ合う懐かしい時間を、すぐに溶けてしまうかき氷に例えた微笑ましくもセンチメンタルな一曲。EMCのような肩の力抜けたラップと、現行シティポップのいいとこ取りをしたようなサウンド、元Summer Rockets愛わなびとのかけあいラップも楽しい。ユーモアあるマーチ展開もおもしろいし、この曲や「三途のリバーサイド」レベルの曲を詰め込めたらブレイク間違いないのでは。来年はアルバムにも期待。


01.中村佳穂「忘れっぽい天使」
[Japan, Pop]
京都の女性シンガー中村佳穂は間違いなく今年の顔だった。ピアノ弾き語りのみならず現行ジャズ/エレクトロも取り込んだアルバム「AINOU」は今年を代表する一枚であることは間違いないが、個人的にはSING USの動画が衝撃的すぎたせいで少しそれも霞むような印象を持った。CRCK/LCKSや吉田ヨウヘイgroupのメンバーを含むバンド編成で、来場者へ事前に音源を配布し来場者全員で曲を作り上げるというコンセプトで披露した2曲があまりにも素晴らしくなぜもっと早く彼女の存在に気付けなかったのかとすら思わされた。そしてライブでも聞けた「忘れっぽい天使」は、目をつむってシャンプーしている時の漠然とした恐怖を描いた曲だと説明され少し笑ってしまったが、喋るように歌いながら騒がしいショッピングモールの騒音すらも音楽に変えてしまう彼女の姿は完全に音楽に愛されていたし、2018年はこれ以上の曲はなかった。


 ■Apple Music Playlists