Memo.95 (2019 Best Tracks (So Far))

30.Shin Sakiura「Cruisin' (feat. SIRUP)」
[Japan, Soul]
lulu + MIKENEKO HOMELESS「海に行きたい」やSIRUPのライブサポートを務めていることでも知られているシンサキウラのソロ名義曲。showmoreANIMAL HACKなど数々のコラボ作をリリースし客演キングに相応しい活動をしていたSIRUPだが、その中でもこの曲はSIRUP名義曲だとしてもまったく違和感がないほど抜群の相性をみせていた。



29.FKD「Linear Elastic Solid」
[Japan, HipHop/Instrumental]
東京のゆとり世代型クリエイティブ集団VIBEPAKの主宰FKDによるOil Worksからリリースされたアルバム「EGO TRIP」から。オーソドックスなワンループながら合間に入ってくるシンセとベースでビートが跳ねるように展開していて自然と体が動く。国内でもチルアウトめなサウンドはインストものが主流になってきているように感じるのは所謂Lo-fi Hip Hop辺りの流れか。



28.sui sui duck「E memory」
[Japan, Alternative]
12か月連続リリース中の5人組バンドによる2月リリースのデジタルシングル。リリース中のシングルを一通り聞いてもサウンドが幅広く現行バンドらしい器用さを感じるが、メロウな現行トレンドを踏襲したサウンドをベースにヌー感まで詰め込んだこの曲が特出していた。シングルの中では「webfoot」も良かったし9月まで楽しませてもらえそう。



27.FAREWELL, MY L.u.v「gloomy girl」
[Japan, Soul]
名古屋を拠点に活動するガールズダンス&ボーカルユニット通称フェアラブのアルバム先行曲。低年齢グループが対バン相手やイベンターに舐められないために作ったというこの曲、トマパイ辺りの楽曲派 (死語か) を彷彿とさせる懐かしいサウンドでおじさん達がざわついているのも納得。しかしこの曲でリードボーカルを取っているメンバーは脱退しているらしく残念。



26.Jay Park & Woo「ENGINE」
[Korea, HipHop]
CODE KUNSTプロデュースで社長ジェボムとSMTM6でも話題となったWooのAOMGコラボ。4つ打ちビートにキャッチーなサックスがアクセントで絡みつつラップに合わせて上ネタで遊びまくるビートが楽しい。AOMGはpunchnelloやLocoの新譜も充実していたし相変わらず多作ながら高いクオリティで楽しませてくれる。



25.紫陽花「baby」
[Japan, HipHop]
サンクラに曲をアップしては削除を繰り返すラッパーajisaiによるフィッシュマンズいかれたBaby」インスパイア曲。チルいビートに怠惰な男女関係を描くリリックが気持ち良い。またいつ消されるかわからないのでお早めに。


24.エイプリルブルー「エイプリルブルー」
[Japan, Indie]
For Tracy Hyde、I Saw You Yesterday、17歳とベルリンの壁らのメンバーによって結成された新バンドのデビュー曲。東京インディの主要メンバーが集合しただけありサウンド面のクオリティは保証済みだが、バンド未経験のVo.船底春希の声がどこかCocco (Singer Songer) を彷彿とさせたりと00年代J-Pop感がにじみ出る秀曲に。各メンバーの本隊バンドよりもかなりマスにアプローチ出来そうなので今後に期待。



23.MC松島「もうみんなでmixiの頃に戻ろう」
[Japan, HipHop]
トーキョートガリネズミ代表 兼 RefugeecampのラッパーMC松島の緊急リリースされた最新シングル。クローズドな空間から承認欲求を満たすツールと化したSNSの憂いを母なるmixiと讃えつつ気だるく綴る。もう昔は良かったというノスタルジーの対象はテレビやラジオではなく初期SNS/インターネットになるんだなと思ったり。同シングルの「乳ギャング」も本当に下らなくてわざわざ緊急リリースするほどのものでもない感じが最高。

もうみんなでmixiの頃に戻ろう

もうみんなでmixiの頃に戻ろう

  • MC松島
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

22.DJ RYOW「no talk zone feat. JIN DOGG」
[Japan, HipHop]
関西トラップとして特集が組まれるほど盛り上がっているシーンの中心人物JIN DOGG。狂気じみたアグレッシブなスタイルではなくこの曲では冷たく淡々とこぼすラップをみせるがそれが逆に緊張感を生み出している。FFⅧのシリアスなトラックや証言ネタを入れてくるリリックまで随所にトピックが詰められているところもおもしろい。DJ RYOWは最新曲「Dream ship」で手裏剣パプを起用したりとさすがのスピード感。



21.マヒトゥ・ザ・ピーポー「Holy day」
[Japan, Alternative]
GEZANのVoマヒトの3rdアルバムから先行公開された1曲。久しぶりにこれほどまで名曲然としたバラードというものを聞いた気がする。90年代後半の写真の羅列から始まり唐突に入ってくるiPhoneやSiriというワードで現実に引き戻され、どうしても彼を彷彿とさせる髪の長いノアともくれん親子の楽しそうな姿の間に差し込まれる多数のイメージとともにすべてがエモーショナルに響いてくる。MVも含め1つの作品として本当に素晴しい。同アルバムからは寺尾紗穂がゲストでボーカルを添える「失敗の歴史」もMVとなっていてそちらも優しさに包まれていて良かった。改めて彼は今のティーンにとってのロックヒーローなのだろうと思わされる。



20.Mall Boyz「mallin' (Tomggg Remix)」
[Japan, HipHop/Electronic]
ラップスタァ誕生への出演でも話題のTohjiとgummyboyによるユニットMall Boyzが昨年リリースした同曲のぐぐぐリミックス。フッドらしいフッドがなくてもショッピングモールへ集うという原体験は皆持っているというコンセプトの元、ショッピングモールで遊ぶ様子をラップしたこの曲。原曲ではblink-182をサンプリングしたタイプビートだったが、このリミックスではメルヘンなぐぐぐビートと無骨なラップとのアンマッチさが逆にそれぞれを引き立たせていておもしろかった。


19.YOHLU「SHEEP」
[Japan, Soul]
福岡発フューチャーソウルユニットYOHLU (ヨール) による第3弾配信シングル。「SKIRT」「SEASON」に続いてリリースされたこの曲は、それまでの方向性を踏襲するミニマルなサウンドにフックで静かに高揚する展開が心地よい決定打的一曲に。melotronmelonやJAM the MOD時代から彼らのことを知っているだけにそろそろ1stアルバムやライブ活動も期待したいところ。



18.折坂悠太「抱擁」
[Japan, Pop/Folk]
2018年と平成を代表する作品となった前作「平成」以来初のシングル。ブラジル音楽的アプローチの演奏をバックに、美しい言語感覚で綴られる静かなラブソング。ある意味まとわりつくことになってしまった平成の音楽というイメージを、全く崩すことなく令和まで綺麗に持ってきてくれると感じた一曲。



17.Little Simz「Selfish (feat. Cleo Sol)」
[UnitedKingdom, HipHop]
ナイジェリアにルーツを持つロンドン出身のフィメールMCによる3rdフル「GREY Area」から、クレオ・ソルをフィーチャーした一曲。 「Offence」を筆頭に90年代の影響を感じるテクニカルなラップとビートが特徴的なアルバムの中でも、何よりも自分を大事にすることをメッセージに掲げたソウルフルなこの曲が特に耳に残った。各メディアでも絶賛されているようで今年もロンドンは強いなと。



16.GXXD (Girlnexxtdoor)「Bellboy (feat. Sik-K, Coogie)」
[Korea, HipHop]
SMエンタ傘下Million Market所属のプロデュースデュオGXXDのデビューシングルから。SMTM777出演でも話題のCoogieと安定したメロウなラップとフックを聞かせてくれるSik-Kが組んだ間違いない一曲。Sik-Kは同シングルの「Come in」にも参加、1stフル「FL1P」をリリース後のシングルでまたGXXDと組んだ極上メロウな「WHY YOU?」をリリース。JP The Wavyとの「Just A Lil Bit」では日本語でのラップをみせたりと今年も活動的な一年になりそう。



15.Volumes「Until the End」
[UnitedStates, ProgressiveMetalcore]
Fearless Records所属LAのDjent/メタルコアバンドによる新作「Coming Clean」からMVにもなったこの曲。Interludeから繋がるこの曲はDisperse以降のモードを踏襲しコーラスのサンプリングを入れつつもアグレッシブに展開していく新しいアプローチで特に際立っていた。サンクララッパーがポストハードコアに影響を受けていたことを公言するケースが増えじわじわとこの手のサウンド復権してきている模様。



14.MON/KU「mickey?」
[Japan, Pop]
22歳栃木県在住宅録アーティストMON/KUによる4曲目。作曲をはじめてまだ数ヶ月ということもあり特に情報もないままSoundcloudでアップされる曲だけ一人歩きし話題になっている彼、一聴して化け物かと思った。アップされている他の曲と比べるとかなり音数も多くアッパーに展開する曲だが、どこかメロディはV系 (一時期のL'Arc~en~Ciel) を彷彿とさせたりと情報量が多いにも関わらずポップス枠に収まりそうなバランス感がすごい。製作ペースも早く、今年何かしらの作品をリリース出来れば一気にブレイクしそう (ビジュアルも申し分ない)。


13.Johnnivan「Nobody's Awake in This House」
[Japan, Indie/NewWave]
日米韓の多国籍メンバーで構成された5人組バンド ジョニバンの1stEPから。2019年らしくないサウンドが繰り広げられるEPの中でもニューウェイブ感強いこの曲が特に素晴らしく各所のイベントでもよく流れていた (ライブも思っていたより泥臭くて良い)。正直すべてを追いかけられていないが、No Buses、Bearwear、THEティバなど頭角を現してきた国内インディはメインストリームがブラックミュージックとなってしまったからこそもっとおもしろくなりそう。



12.Vampire Weekend「Harmony Hall」
[UnitedStates, Indie]
名盤「Modern Vampires of the City」から5年ぶりとなった新作「Father of the Bride」からの先行シングル。前作からの5年で音楽業界も世界情勢も大きく変化を遂げているが、春の芽吹きを感じさせるオーガニックなサウンドは変わらぬまま歌詞の内容的には彼らなりのプロテスト・ソングなのかと考えさせられる面もあり、何にせよ素晴らしい楽曲と共に戻ってきてくれて本当に嬉しい。



11.Madeon「All My Friends」
[France, Dance/Electronic]
Porter Robinsonとの「Shelter」以来3年ぶりとなるフランスのプロデューサー マデオンの新曲。マデオンらしい柔らかく美しいサウンドに軽くエフェクトがかかったボーカルがどこまでも心地よい (ビート感からはディスコぽさを感じるが気持ち良く揺れられる)。カムバックまで待たされすぎたので秋にリリース予定と噂のアルバムもハードルをあげて待っておこうと思う。



10.DJ Khaled「Higher (feat. Nipsey Hussle & John Legend)」
[UnitedStates, HipHop]
Tyler, the Creatorとのチャートバトルに僅差で破れたDJキャレドの新作「Father of Asahd」から。ゴスペル調コーラスをループさせた多幸感溢れるトラックにJohn Legendによるフック、そして先日惜しくも命を落としたニプシーをこの曲で起用したことも何かの意味があるように感じてしまう (家族についてラップする中でも、マニは10歳 クロスは2歳になったという歌詞がとてもやるせない気持ちになる)。2verse目のビートチェンジもクールでこれだけアンセミックな曲を3分以内にまとめるところも今っぽい。



09.JUBEE「NOISE SURFER MIND」
[Japan, HipHop]
CREATIVE DRUG STOREのラッパーJUBEEによる2年ぶりの新曲。ジャケットなどのビジュアル含めフロウもワードチョイスも00年代前半のデジタルミクスチャー感をオマージュしていてど世代の人間としてはニヤけてしまった。続くシングル「BLUE ZONE」も路線は変わらずアルバムへの期待が高まる。CDSからBIM、VaVaに続いてin-dもソロ作をリリースと活気が出ているのでJUBEEも続いて欲しい。



08.桜エビ~ず「それは月曜日の9時のように」「214」
[Japan, Pop]
12ヶ月連続シングルリリース中のスタダ所属桜エビ~ずによるONIGAWARA (ex-竹内電気) プロデュースの一曲。タイトル通り月9ドラマのオマージュを散りばめた王道シティポップ系アイドルサウンドで高揚感溢れるサビにもグッと来るし、ジャケットにパ音のマーチなどで知られているki_moi起用のアプローチもおもしろい。2月にリリースされた「214」も良かったしぼちぼちコンパイルしたアルバムが出るかもしれないと期待。



07.black midi「953」
[UnitedKingdom, Indie]
Fontaines D.C.と並び今UKでもっとも注目されている4人組によるデビューアルバムから。入りからマスロック感全開でニヤけてしまうが、フックとなるフレーズを組み合わせて曲を構築しつつ最終的には衝動に任せきったように展開していく構成が素晴らしい (基本的に作曲はインプロで行うとのこと)。すでに各メディアのベストアルバムレースでは上位にランクイン。今年は先述した2バンドをプロデュースしたDan Careyの年になるのかと思ったりも。



06.舐達麻「FLOATIN'」
[Japan, HipHop]
"バール買いに行かせた今藤 仕事バックレた高橋 借りに行かせた武富士 中古屋事務所外 裏口 見てわかる金庫の場所" という始まりからインパクトがすごいこの曲は、金庫強盗からの逃走中に亡くなったクルーの1.0.4. (トシ) について語られる一曲。ひたすらに重いリリックとは対照的にGreen Assassin Dollarのビートがとても美しい。ラッパーは不良でいい というツイートですら炎上するほどラッパーという人物像が多様化してきているが、こういった事実に基づいた緊張感あるストーリーテリングがこのジャンルの醍醐味であることも確か。



05.大森靖子「LOW hAPPYENDROLL --少女のままで死ぬ-- feat. 平賀さち枝
[Japan, Pop]
若手女性監督による15本のオムニバス映画「21世紀の女の子」でラスト15作目のバックで流れていたこの曲。焦燥感とエモーショナルさがエスカレートしていく曲展開も、同じメロディに異なる歌詞と感情を乗せる2人のかけ合いも、大森靖子の一方的な思いも含め本当に素晴らしい曲だと思いつつ、大森靖子が歌う少女賛歌は男であるぼくには数パーセントも理解できてないのだろうなと寂しく思ったりもする。



04.片想い「2019年のサヨナラ(リリーへ)」
[Japan, HipHop]
カクバリズムの8人組バンド片想いがハマケン主役のドラマ主題歌として、以前からライブで披露されていた「2017年のサヨナラ(リリーへ)」を2019年版として録り直した曲。相変わらず大きな愛に満ちたアンセミックな曲を作るのが本当にうまいし、この曲を年末に改めて聞き直したときにどう自分の心に響くのかが今から楽しみになる。続けて7インチシングル「環境」もリリースし、パーティーに殺される以来のアルバムも期待 (福岡でどれだけ片想いの曲がクラブでかかっててみんなに愛されていると思ってるんだはやく来て欲しい)。



03.SKOLOR & RAq「Timeflies」
[Japan, HipHop]
YUNGYU & FUTURISTIC SWAVERとの「4G」がヒットした韓国のラッパーSKOLOR (TYOS3L) と、週一リリースの傍らライター活動も話題のRAqとのコラボ (クレジットにはないがジメサギも参加)。語弊があるかもしれないがビートジャック (Wonder Why) という手法も、いつの間にか大人になってしまったという青年期の喪失を描くテーマも、時代に左右されないオーセンティックなスタイルもネットラップ出自らしさがあってニヤけてしまう。「WKND」も良かったしコラボアルバムも作成中?とのことなので期待。



02.iri「Wonderland」
[Japan, Soul]
ソウルフルなボーカルで現行シーンを代表する存在となった逗子のSSWによる3rdフルから。フックのきいたシングル型楽曲が多めだったこれまでとは違いシンプルなアプローチへ挑戦した新作も素晴らしかったが、その中でもピスタチオのESME MORIとの共作が特に際立っていた (エズミはchelmicoの新曲も手がけていたが振り幅がすごすぎる)。シンプルなピアノ/ドラムループのトラックに彼女の歌の強さと安定したフック作りのうまさでキャリアを更新した素晴らしい一曲。テラスハウス東京編でも流れていたしいよいよもう一段階ステップアップするフェーズかと。



01.Lucky Kilimanjaro「HOUSE」
[Japan, Electronic/Pop]
東京の6人組エレクトロポップバンドによる4ヶ月連続リリース中の第2弾シングル。BPM125で始まるイントロからフロア向けのハウスチューンかと思いきや、ひたすらに家で音楽を楽しむことを奨励したインドア派音楽好き賛歌になっていて笑ってしまう (ハウスがかかってる)。彼らの曲はとにかく外でも家でもいいからみんなを踊らせたいという気持ちが前面に出まくっていて清々しい。ぼくも彼らが踊らせてくれるのを待ってる。