Memo.96 (2019 Best Albums (So Far))

30.SIRUP「FEEL GOOD」
[Japan, Soul]
2018年の顔こと大阪出身のシンガー/ラッパーの1stフル。歌とラップ/日本語と英語を自在に行き来するスタイルとキャッチーなフック作りで一気にシーンのトップへと踊り出たSIRUPだが、本作でもその手法を踏襲しつつBIMやTENDREなどのゲストを迎え「Do Well」「LOOP」という代表曲も収録し着実にその立ち位置を確固たるものとした。しかし約半数が既発曲であるため2018年感が拭えなかったところもあるので次のアクションに期待。

FEEL GOOD

FEEL GOOD

  • SIRUP
  • R&B/ソウル
  • ¥2000

 

29.MOROHA「MOROHA IV」
[Japan, Rap/Folk]
曲に込められた思いで気持ちが引っ張られてしまう音楽は聞くのに心の準備がいる。MOROHAの音楽は聞くのに心の準備がいるし、メンタル的に彼らの音楽を必要と思わないときもある。今の日常に大きな不満はないし背中を押して欲しかったり胸倉を掴まれたい状況ではないけれど、少し懐かしい気持ちになりながら新譜をチェックしてみたら思いっきりぶん殴られた。特に終盤「夜に数えて」~「五文銭」まで、独特の新しい日本語表現と変わらない熱量で圧倒される。MOROHAはあの頃から何も変わってない、変わったのは自分だと感じ思わず姿勢を正した。

MOROHA IV

MOROHA IV

  • MOROHA
  • J-Pop
  • ¥2100

 

28.クボタカイ「305」
[Japan, HipHop]
Ano(t)raksからリリースされた福岡在住ラッパーの2ndデモ。サホリちゃんが中洲を練り歩くMVも最高な「ベッドタイムキャンディー2号」はフックの気持ち良さもありつつ上手くいかない男女の関係を描いた素晴らしい一曲。平成の次の元号キャラメルフラペチーノ「平成少女」、現行寄りアプローチの「マージナルガール」、夢番地ライクな「せいかつ」までとにかくフックの作り方がうまくとてもデモとは思えないクオリティに驚かされる。スタイリッシュなサウンドとして共鳴するMomやMEGA SHINNOSUKEなどに続く逸材として注目されているがMCバトル経験者ということもあり幅広い活動にも期待。 



27.んoon「Body」
[Japan, Soul]
FLAKE SOUNDSからリリースされた4人組オルタナティブソウルバンドんoon (読みはフーン) の2nd EP。ギターレスでハープがメンバーにいるという特徴な構成のバンドだが、MVのインパクトもすごい「Gum」や「Suisei」など隙間を残したグルーヴィなサウンドが癖になる。早速今月ライブが観れるので楽しみ。

Body - EP

Body - EP

  • んoon
  • R&B/ソウル
  • ¥1200

 

26.Leven Kali「Low Tide」
[UnitedStates, Soul]
カリフォルニアのシンガー レイヴィン・カリのデビューアルバム。先行カットされていたメロウな「Nunwrong」、Syd (The Internet) をゲストに迎えた「Do U Wrong」、ダンサブルな「Cassandra」やかつて代名詞として呼ばれていたゴスペルファンクの延長線にある楽曲もありとても充実した一枚。彼はかつてEXO「Tempo」やNCT U「The 7th Sense」などSM関連の楽曲も手掛けていたようでびっくり。

Low Tide

Low Tide

  • レヴィン・カリ
  • R&B/ソウル
  • ¥1900

 

25.Toro y Moi「Outer Peace」
[UnitedStates, SynthPop]
FUJI ROCK FESTIVALにも出演が決まったトロ・イ・モアの最新作。ボイスサンプリングが特徴的な「Fading」からMVもユニークな「Ordinary Pleasure」にこのアルバムのリード曲「Freelance」、Wetをゲストに迎えた「Monte Carlo」などなど10曲30分で気持ちよく聞ける一枚。今年はこのアルバムから始まったイメージ。

Outer Peace

Outer Peace

 

24.Youmentbay「Youmentbay」
[Japan, Pop]
下北沢を中心に活動する男女ツインボーカルバンドYoumentbay (ユーメントベイ) による、先行リリース済みの2枚のEPから「GOOD」「Holiday」等の既発曲に新曲を加えた初全国流通盤。ブラックミュージックテイストある現行シティポップの影響も感じつつ、かけ合いのラップやインディポップをうまくゆるっと混ぜ合わせたサウンドがとても気持ち良い。「30th」では平成の最後をテーマに描いたり、「Night Radio」では最後に疾走感を付け加えたりと自然と身体が動くmusicが意識的に奏でられている。

Youmentbay

Youmentbay

 

23.LambC「Green is the new Black」
[Korea, Soul]
現行トレンドを汲んだメロウなサウンドに定評のある韓国のプロデューサによる最新EP。昨年ヒットした「Turnin'」の収録EPでAbsenceシリーズが完結し、新プロジェクトとしてリリースされた4曲に新曲を加えパッケージされた本作。年明けにリリースされたレムシ印な「Childish」に飛びきりキャッチーな新曲「Fallin'」、彼ら史上最もダンサブルな「Treat You Right」まで安定のクオリティで仕上げている。本国よりも日本の方が彼らを支持しているようにも感じるほどフィットしているためいずれは日本での活動も期待したい。

Green is the new Black - EP

Green is the new Black - EP

  • LambC
  • シンガーソングライター
  • ¥750

 

22.BOYCOLD「POST YOUTH」
[Korea, HipHop]
Sik-Kの同名アルバムプロデュースでも知られているYellows Mobのプロデューサーによる1st EP。タイトル通り青春の愛をテーマにしたというこのアルバムは、 H1GHRのHAONにYellows MobのCoogie、「My Land」が賛否を呼んだBeWhyという豪華メンバーを集めた上にビートも最高な「YOUTH!」や先述したSik-Kゲストの「Stupid Twenty」を筆頭にpH-1など豪華メンバーを揃えた充実作。GroovyRoomに続いて欲しい。

POST YOUTH

POST YOUTH

 

21.Anderson .Paak「Ventura」
[UnitedStates, Soul/Jazz]
Dr.Dreによるディレクションからかファンク/ヒップホップ色を強めて賛否を呼んだ前作「Oxnard」から5か月という短いスパンでリリースされた4thフル。本作はドレーがあまり手を出さなかったソウル盤という立ち位置らしく、豪華ゲストを招き全体的にメロウに仕上げた気持ち良い一枚に。特にThe AlchemistプロデュースでSmokey Robinsonをコーラスとして起用した「Make It Better」が本当に素晴しくて正直この曲ばかりリピートしているが、Andre 3000との「Come Home」やBrandyとの「Jet Black」、Nate Doggと疑似共演したラスト「What Can We Do?」までどの曲も素晴らしく、前作の不評っぷりを帳消しにした。個人的にはまた「Malibu」のような作品を作って欲しかったりも。

Ventura

Ventura

  • アンダーソン・パーク
  • R&B/ソウル
  • ¥1100

 

20.NU'EST「Happily Ever After
[Korea, Pop]
Pledisエンターテイメント所属の5人組による6thミニアルバム。メロウなフックが心地よい1曲目の「Segno」はライブだと口上みたいなのが入ってて驚いたが、現行色強い「Talk about love」、ディープハウス調な「Different」、MVにもなったアッパーな「BET BET」などなど楽曲完成度の高さとWANNA ONEを経てからの再始動ということもあり本作で再ブレイク。彼らのブレイクによる影響かは定かではないが先日PRISTINが解散を発表したのは本当に残念。

 

19.kiki vivi lily「vivid」
[Japan, Pop/Soul]
Pitch Odd Mansion所属の福岡のシンガーによる1stフル (1stなのにびっくり)。WONKのレーベルEPISTROPHからのリリースとなった本作は、持ち味ともいえるポップスとブラックミュージックを自在に行き来するカラフルなサウンドをベースに、PODやEPISTROPHメンバーによるバックアップで作り上げた彼女にしか作れない作品に。「AM0:52 (Sweet William Remix)」でのSW仕事だけでもPOD入りする価値があったなと思わされたが、先行リリースの「80denier」「カフェイン中毒」辺りのサウンドを聞いても最低限の音のみを重ねる彼女の今のモードを感じ取れるし、珍しくパーソナルな一面を表現したという「At last」でのフルート使いなどはEPISTROPHならでは。POD界隈のゲストとしてピックアップされることが多かったが、ミュージックマガジンでも10点満点という高評価を得ているしソロシンガーとしてさらに幅広い活躍にも期待。

vivid

vivid

  • kiki vivi lily
  • J-Pop
  • ¥2400

 

18.VaVa「VVORLD」
[Japan, HipHop]
今年の国内ブレイクアーティスト1人目、CREATIVE DRUG STOREのラッパーVaVaの2ndフル。昨年リリースされた3枚のEPから、彼の代名詞ともなったブラス使いの「現実 Feelin' on my mind」、彼の人気を決定づけた昨年末リリースのEPから「Virtual Luv (feat. tofubeats)」「Hana-bi (feat. BIM)」「星降る街角 (feat. 角舘健悟)」などを収録した万全の一枚。EPからの収録曲が多いことやブラス使いビートが大半を締めるため "EPサイズのスター" という意見に納得せざるをえない部分もあるが細かいことは置いといて次の一手に期待しよう。

VVorld

VVorld

  • VaVa
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥2000

 

17.Shrezzers「Relationships」
[Russia, ProgressiveMetalcore]
ロシアの最終兵器Shredding Brazzers改めShrezzersのデビューアルバム。2年半前プログメタルコアにサックスパートをぶっ込んで来た「Mystery」で一気に注目された後、「Vivacious」「Spotlight」「E.M.O.J.I.Q.U.E.E.N.」といった多数のシングルを経た上での集大成的一枚。先述曲を筆頭にDjent以降のプログレッシブな展開と突如ドラマティックに空気を一変させるサックスパートを武器に構成されるが、「Knuckles」でのスクラッチ&ラップパート、「Anaraak」では北欧ライクな民族音楽テイストも取り込んだりと、意図して実験的なサウンドへとアプローチ。サウンドが似ているという意味ではなく、ポストハードコアとして実験的なサウンドを構成しつつジャンルを超えてアプローチできるキャッチーさを兼ね備えたバンドはIssues以来のように思う。

Relationships

Relationships

  • Shrezzers
  • ロック
  • ¥1500

 

16.ゆいにしお「角部屋シティ」
[Japan, Pop]
名古屋の現役女子大生SSW。柔らかい歌声と春の涼しさを感じるサウンドがとても心地よい。物心ついた頃には渋谷系終わってた世代の渋谷系「スピーチレス」、現行のモードを踏襲した「DAITAI」、歌詞が特徴的な失恋ソング「マスカラ」、そして先行カットされていた「帰路」までシンプルに良い曲が詰め込まれた良作。自分は良い曲だけを作ってあとはファンに頼んだと投げるスタンスもおもしろい。J/GのTシャツを着ていたことで存在を知った彼女、もしJ/Gがインターネットにまだいたなら彼女の曲をカバーしてサンクラに上げていただろうなと思う。

My Corner Room and City - EP

My Corner Room and City - EP

  • ゆいにしお
  • J-Pop
  • ¥1200

 

15.BLACK BASS「LFP
[Japan, HipHop]
現役慶應義塾大学生の7人組アートコレクティブによる2nd EP。アンビエントに影響を受けたようなKRICKの浮遊感あるビートに、XBSよりエクストラベースなGERAとハイトーンoTTsとのラップも対照的でおもしろい (見た目と声が完全に逆)。特に「LOOOP」が大きくピックアップされ、同曲の大阪MOMENT JOONによるリミックスも話題に。EPも5曲15分と短いながら充実した内容で、その後もシングルを多数リリースするなどタイミング次第で一気にブレイクもありえる注目株。

LFP - EP

LFP - EP

  • BLACK BASS
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥900

 

14.ミツメ「Ghosts」
[Japan, Pop]
東京インディー三銃士のひとつこと4人組バンド ミツメの5th。先行シングル「エスパー」「セダン」のようなしっかりとしたサビのある楽曲が軸となった丁寧なポップスアルバム。今までのミツメらしい音像を残しつつ心を少しざわつかせる描写も変わらず印象的 (少しの闇が垣間見えるスピッツという表現がしっくり来た)。アルバムの曲名を眺めているだけでも想像力を沸き立たせてくれるし、こういったポピュラーミュージックが評価されるシーンであって欲しい。

Ghosts

Ghosts

 

13.Mayfield「Careless Love」
[Canada, MelodicHardcore]
Dreambound所属カナダの叙情派ニュースクールバンドによる1stフル。様式美的叙情派サウンドを踏襲しながらも、前EP「Hollow Embrace」を超える熱量でシャウトとクリーンが交錯する手に汗必至な悶絶作。序盤からストップ&ゴーで揺さぶる「Do You Miss Me?」「Recovery」、そして先行シングル「My Heart Gets Left Behind」「Torn」「Blossom」からインスト「The Missing Piece」まで畳みかけ、ラストの感動作「Careless Love」まで一気に駆け抜ける素晴らしい一枚。個人的にはT,TVよりも彼らにこのシーンを大きくしてもらいたい。

Careless Love

Careless Love

  • Mayfield
  • メタル
  • ¥1350

 

12.YOSA & TAAR「Modern Disco Tours」
[Japan, Dance/Electronic]
渋谷VISIONの人気イベントMODERN DISCOのレジデント2名による共同プロジェクト。先行配信されていたSIRUPとの2ステップ「Fever」が素晴らしすぎて期待値が上がっていた1stだが、同じく先行配信されていた「Slave of Love (feat. 向井太一 & MINMI)」、福岡AttractionsのTaroをゲストに迎えた「Perfect Fire」、ラスト曲「HIKARI (feat. 踊Foot Works)」まで豪華ゲストを迎えつつあくまで現場を意識したような素晴らしい内容に。タイトル通りMODERN DISCO地方開催などやってくれないかなと少し期待。

Modern Disco Tours

Modern Disco Tours

  • YOSA & TAAR
  • エレクトロニック
  • ¥1800

 

11.踊Foot Works「GOKOH」
[Japan, HipHop]
ヒップホップともポップとも違う絶妙なバランスのサウンドで一気に駆け上がった4人組の2ndフル。中盤で過去へ跳躍し現在へ戻ってくる展開もクールな「PRIVATE FUTURE」や先行リリースされていた「GIRAGIRA NEON」を筆頭に、Tempalayのエイミーをゲストに迎えた「髪と紺」、Instagramが超映える全員ボーカル曲「SEASONS」などなど相変わらずフックの完成度が高すぎて唸らされる 。コンスタントにリリースしつつも常に一定のクオリティを保てているのが流石、もっと売れていい。

Gokoh

Gokoh

  • 踊Foot Works
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥2200

 

10.LOOΠΔ「[X X]」
[Korea, Pop]
BlockBerry Project所属のガールズグループLOONA (今月の少女) リパッケージアルバム。毎月1人ずつメンバーを公開し12人の完全体となって初のリリースとなった本作は、高い音楽性から韓国外の支持が多いのも納得のクオリティ。MVにもなっている「Butterfly」はサウンド面もさることながら個性的なダンスパフォーマンスも引き込まれるし、メロウな「Satellte」やGroovyRoom「Sunday」同ネタの「Colors」などなど本当に全曲素晴らしい。はやくも日本デビューの話が出てきていたりと今年要注目のグループ。

[X X] - EP

[X X] - EP

 

09.Bring Me The Horizon「amo」
[UnitedStates, Metalcore]
右腕をタトゥーで塗りつぶして真っ黒になったオリバー率いるBMTHの4年ぶりの6thフル。初期のデスコアはどこへやらなポップス寄りオルタナサウンドへシフトして大成功した前作「That's The Spirit」のテイストを引き継ぎつつ、本作では現行エレクトロなどを取り込みさらにサウンドの幅を広げてまたもや大成功。オルタナ感満載な先行曲「MANTRA」から最高だが、Grimesとの「nihilist blues」、元The RootsRahzelとの「heavy metal」といったサプライズを用意しつつ全編シングルクラスな楽曲完成度で持っていく (特に「medicine」~「mother tongue」辺りの中盤が素晴らしい)。「Suicide Season」で初めて彼らを知った頃はこんな形で生き残っていくとは思ってもみなかった。SUMMER SONICでの来日も決定し日本でも人気に火がつきそう。

amo

amo

  • Bring Me The Horizon
  • ロック
  • ¥1600

 

08.Tajyusaim boyz「スリルドライブ
[Japan, HipHop]
月曜から夜ふかしに出演も話題を呼んだゆとり世代型多重債務者集団による1st EP。一部でバイラルヒットした「リボで買う。」を筆頭に、給料日にいくつもの金を使いはたす「給料日くらい いいじゃない。」、友達にお金を催促する「もしもし、どうすか?」、TWICEに貢ぐ「TWICE」などコミカルな曲が並ぶが、助手席に幽霊がいるというテーマで進む「スリルドライブ」はさすがに予想外のアプローチすぎてわらった。MVも15万再生されるなどある程度売れてきている気がするのではやくリボ払いを脱出してほしい。

スリルドライブ - EP

スリルドライブ - EP

  • Tajyusaim Boyz
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1500

 

07.Tempalay「21世紀より愛をこめて」
[Japan, Alternative]
BTSのRMが「どうしよう」をピックアップし世界的にバズったことでも話題の3人組バンドによる最新作。彼らの特徴でもある中毒性あるサイケデリックポップの一つの完成系とも思えるような充実作に。イントロ的1曲目からなだれ込むリード曲「のめりこめ、震えろ。」、メンバー藤本夏樹に第一子が生まれたことと映画ソナチネをインスピレーションにできたという「そなちね」の流れで一気に持っていかれる。正式加入したエイミーとのツインボーカルで色々なものに規制がかかることへの憤りを込めたという「脱衣麻雀」、前EPから「THE END」「SONIC WAVE」も収録しラストは感動的な「おつかれ、平成」で締める。少し癖のあった今までの作品に対して本作は大きく外へ開けているし、あの頃が革命前夜なら本作で革命開始か。

 

06.in the blue shirt「Recollect the Feeling」
[Japan, Electronic]
自主レーベルからリリースとなった京都のトラックメイカー有村崚の2ndフル。Spliceのサンプルボーカルをカットアップして再構築する手法で作られたサウンドは、言語化できないボーカルが新たなメロディを生み出していて同ネタ使いのトラックメイカーの中でもひとつ頭が出たように感じる秀作。先行公開されていた「Cast Off」や「Good Feeling」、バンド編成での「Fork in the road」など新しいアプローチも入れつつソウルネタ風な「Riverbed」で締める心地よい一枚。tofubeats企画のTTHWに参加、DTM交流会POTLUCK Lab.を主催などパ音、ゆnovation辺りの界隈は本当におもしろい。

Recollect the Feeling

Recollect the Feeling

  • in the blue shirt
  • エレクトロニック
  • ¥1500

 

05.Kan Sano「Ghost Notes」
[Japan, Electronic]
origami PRODUCTIONSのプロデューサー/キーボーディスト/マルチプレイヤーによる2年半ぶりの新作。現行トレンドでもあるLo-Fi Hip Hopなどを取り込みつつ彼のルーツであるネオソウルを再解釈したというこのアルバム。ライブでもラストに披露されていた美しい「Stars In Your Eyes」やダンサブルな「My Girl」「Don't You Know The Feeling?」を筆頭とする歌もの曲が特に素晴らしいが、TOKYO SOUNDSでの1人即興動画も話題となったビートもの「DT pt.2」とそこから流れるように続く美しいピアノ曲「Sit At The Piano」がハイライト。先日のリリースライブでもマルチプレイヤーっぷりを発揮する即興だらけの構成となっていて本当に楽しかった、現時点で今年のベストライブ。

Ghost Notes

Ghost Notes

  • Kan Sano
  • R&B/ソウル
  • ¥1800

 

04.君島大空「午後の反射光」
[Japan, Pop]
国内SSW新たな才能が本当に止まることなく現われてくる。ドラムサポートに石若駿を迎え、CRLK/LCKSの所属レーベルApollo Soundsからという万全の体制でリリースされた君島大空の1st EP。90年代後半シューゲイズ/オルタナ感ある邦ロックをサイケに混ぜ合わせ、とけそうなほど儚げに歌われる陰を含んだポップソングは、直接降り注ぐ光ではなくイメージとしての反射光というサウンドスケープが広がる。「遠視のコントラルト」「午後の反射光」が本当に素晴らしかった。2019年は長谷川白紙の草木萌動を超えるところから始まると昨年のベストアルバム記事で書いたが、彼らを中心にMON/KUや浦上・想起やuamiなど止まることなく現われてとんでもない規模へと膨れ上がっているし、あと1,2年でシーンが入れ替わるのは確実。

 

03.Dos Monos「Dos City」
[Japan, HipHop]
yahyel、向井太一らとの交流も深い荘子it擁する3人組によるデビューアルバム。Thelonious MonkBrilliant Corners」を大胆にサンプリングしたかけ合いラップ「in 20XX」の権利問題でリリースが遅れただけにハードルが上がっていたわけだがそれを軽く飛び越え今年を代表する一枚に。ジャズを再構築しインテリジェンスを感じる独特のワードチョイスでラップを乗せるスタイルからはコラージュにも近い遊び心に満ちている (その辺は自らをもうひとつのシティポップと名乗るインタビューに興味深い内容が書かれていた)。特に序盤「劇場D」~「Clean Ya Nerves」までを聞いたときにどクラシックかと思ったし、初めてSIMI LABを聞いたときと同じ衝撃を受けた。

Dos City

Dos City

  • Dos Monos
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥2000

 

02.NOT WONK「Down the Valley」
[Japan, Indie]
KiliKiliVillaからcutting edgeに移籍した苫小牧の3人組による3rdフル。このアルバムのきっかけとなったであろう前作収録の「Of Reality」で提示したパンク/エモとソウルの親和性を、無骨ながらも美しさを感じるNOT WONKの音へと落とし込み作り上げた傑作。先行公開されていた「Down The Valley」はこのアルバムの方向性を象徴する本当に素晴らしい一曲だし、7インチシングルの2曲を1つのトラックに統合した「Count / Elation」の焦燥感とエモーションは否応なく聞き手の心を動かしてしまう。1stアルバム「Laughing Nerds And A Wallflower」から4年、ここまでシーン内外を巻き込む素晴らしい作品を作るバンドになるとは正直思っていなかったが、すべてを東京が動かす訳ではないこの状況で地方のインディ/オルタナティブなバンドがおもしろくならない訳がないし、それは一番彼ら自身が自覚してるだろうなと思う。

Down the Valley

Down the Valley

  • NOT WONK
  • ロック
  • ¥1650

 

01.Billie Eilish「WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?」
[UnitedStates, Pop]
コーチェラでのライブも話題を呼んだLA出身17歳のSSWビリー・アイリッシュによる化け物デビューアルバム。彼女の存在を知った「bury a friend」は、SoundcloudラッパーらによるEmo Trapや自身も楽曲提供したドラマ13の理由など現在のティーンにまとわりつく憂鬱を埋葬することがテーマとなっていて、MVの世界観とメッセージ性含めトピックスに溢れた楽曲だった。この音域の低さでライブではアッパーになるのかと驚いた「bad guy」は各所で流れまくっていて今年を代表する一曲となるのは間違いないし、xanax絶ちを表明する「xanny」や「you should see me in a crown」での凶悪なサブベースは鳥肌が立つ。さらにうまくいかない恋に対してあなたがゲイだったらいいのにと嘆くキャッチーな「wish you were gay」のような曲まで揃えていて驚愕する。サウンド的なおもしろさもありつつティーンの代弁者という意味ですでに2020年を代表するアーティストとなることが約束された彼女 (ポップアイコンとして扱われることには嫌悪感を抱いているそう)。Soundcloudでバズを起こしたことがきっかけでデビューし、友人であるXXXTentacionの死に追悼の意を表しfriendとして楽曲に登場させたところからも、彼女は圧倒的なカリスマ性を持ったSoundcloudラッパーの流れと解釈するのが正しいような気がするし、頭の固い大人からは疎まれがちだったSoundcloudラッパーのひとつの到達点のようにも思える。何にせよ2019年以降の音楽は彼女の存在なしには語れなくなってしまった。