Memo.89 (2018 Best Albums)

50.YELLADIGOS「Story Of Indigo」
[Japan, HipHop]
黄色い肌のインディゴチルドレンこと福岡のコレクティブによる最新作。フックなしでもぶち上がるバウンシーな「Neo Jungle」に先行リリースされていたチルい「Gold Kush」(いろいろとスレスレ)、同じく福岡在住のkiki vivi lilyを迎えた「Only」などこれまででもっともベストな内容に。極めつけは親不孝通りのグラフティでもお馴染みBIGIz'MAFIAの宝リミックスで締めるなど最後まで抜け目ない。peavisソロも良かったしabout musicとの絡みでオーバーグラウンドな活動も増えておもしろくなってきた。

Story Of Indigo

Story Of Indigo

  • YELLADIGOS
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1800

 

49.RIRI「RIRI」
[Japan, Pop/R&B]
話題の現役女子高生シンガーRIRIの1st。前作までは少し楽曲に力が足りないような印象もあったけれど、本作ではトレンドを汲んだリード曲「That's My Baby」「Crush on You」という武器によって日本人離れした歌唱力で押し切るパワータイプの大型新人登場といえるアルバムになった。サウンドや方向性含め圧倒的にぶれないソニーっぽさもなかなかおもしろい。

RIRI

RIRI

  • RIRI
  • R&B/ソウル
  • ¥2100

 

48.ヤなことそっとミュート「MIRRORS」
[Japan, Alternative]
グランジ/オルタナサウンドで話題のヤなミュー2nd。「ルーブルの空」にしても先行EPに収録されていた「Any」「AWAKE」にしても入りのギターからすでに最高だし、「Palette」のまんま90sエモなギターは嫌いな人なんていない。しかしオルタナというよりも00年代エモ/ニュースクール感が強いなと思っていたら「HOLY GRAiL」他2曲でBACKDATE NOVEMBERのYohei Shibata、ラスト「Phantom calling」ではNENGUの馬場庫タロウが作曲しているのを知ってそりゃ良いわってなった。

MIRRORS

MIRRORS

  • ヤなことそっとミュート
  • J-Pop
  • ¥1650

 

47.Jvcki Wai「Enchanted Propaganda」
[Korea, HipHop]
PARKGOLFとのコラボでも話題を呼んだSwings主宰Indigo Music所属のジャッキー・ワイによる1stフル。オートチューンを効かせた歌うようなフロウで現行のTrapにもしっかり乗せられるタイプのフィメールラッパーは今までいなかったのでは。「Enchanted Propaganda」や「Digital Camo」など癖になるフックの作りもうまく、Hi-Lite Recordsやluteとも契約しキュートなルックスも相まって来年さらに活躍しそう。

Enchanted Propaganda

Enchanted Propaganda

 

46.Midas Hutch「The Feels」
[Netherlands, Disco/Electronic]
10月に来日したオランダのDJ/プロデューサーFS Greenの80'sディスコブギープロジェクト マイダス・ハッチの2ndEP。英シンガーBluey Robinsonをフィーチャーした「Ready or No」が人気だが、アーバンメロウな「I Feel For U」が特にお気に入り。親日家であることも知られているがこの手のサウンドは日本のオーディエンスとも相性抜群。

The Feels - EP

The Feels - EP

  • Midas Hutch
  • R&B/ソウル
  • ¥750

 

45.The Internet「Hive Mind」
[UnitedStates, HipHop/Funk]
高評価を得た「Ego Death」リリース以降、各メンバーのソロ活動がメインとなっていたThe Internetのカムバック作。ヒップホップをベースにしつつもソウルフルな楽曲が主軸のイメージだった彼女たちだが、ややクラシカルなファンクをフィーチャーしSteveがメインボーカルを務めた「Roll (Burbank Funk)」や「La Di Da」で新たな一面をみせてきた。1月の来日を逃してしまったので次に期待。

Hive Mind

Hive Mind

  • The Internet
  • R&B/ソウル
  • ¥1600

 

44.春ねむり「春と修羅
[Japan, Rock/Poetry]
Perfect Music所属のシンガーによる初フルアルバム。以前所属していたLOW HIGH WHO?らしいファンタジックな世界観のポエトリーとバンドサウンドを混ぜるとこれほど尖るのかと。独特のワードチョイスや「鳴らして」でのシャウト気味なボーカルは焦燥感に溢れていて引き込まれてしまう。色モノ枠かと思っていたけれど一般層にもがっつり刺さるのでは。

春と修羅

春と修羅

  • 春ねむり
  • J-Pop
  • ¥1800

 

43.DJ CHARI & DJ TATSUKI「THE FIRST」
[Japan, HipHop]
昨年「ビッチと会う」がヒットした2人組による1stフル。クラブでかかる日本語ラップがコンセプトだけあり、もろLil Peepな「Good Die Young」、KEIJUとYZERRを組み合わせた「Right Now」を筆頭にトレンドなビートを揃えYo-Sea、RENE MARS、Pablo Blastaなど期待の若手も起用した充実作。

THE FIRST

THE FIRST

  • DJ CHARI & DJ TATSUKI
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥2400

 

42.youheyhey「moonlight」
[Japan, HipHop]
ツイッターギャングスタとして名を馳せているラッパー兼DJヨヘヘ。随所に入る大ネタのラインもおもしろいしtakevnapによる「fucktokyo」やSUNNOVAによる「labyrinth」も良いが、自身プロデュースによるラスト2曲のまっすぐなメッセージが胸を打つ。本当にこんなに良い音源を作ってくるのは意外だった。

moonlight - EP

moonlight - EP

  • youheyhey
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥900

 

41.Pale Waves「My Mind Makes Noises」
[UnitedKingdom, Indie]
Summer Sonicにて来日し来年2月に早くも再来日が決まっているマンチェスターの4人組によるデビュー作。ゴシックなビジュアルのHeather Baron-gracieが新世代アイコンとして注目される中、「There's A Honey」「Television Romance」「Noises」といったキラーチューンを引っ提げデビュー作としては文句なしの一枚に。ネクストThe 1975となれるか。

 

40.蓮沼執太フィル「アントロポセン」
[Japan, OrchestralPop]
蓮沼執太によるフィルハーモニックポップオーケストラによる4年半ぶりの2ndフル。前作「時が奏でる」が10年代を代表するクラシカルな一枚だった彼らの最新作は、「Meeting Place」を筆頭に前作の要素を引き継ぎつつも、各メンバーのパートを入れ替えたcentersシリーズなどある意味での未完成さも許容した16人バンドとしての作品。トリフォニーホールでの26人フルフィル体制も音の重なりがあまりにも綺麗で素晴らしかった。

アントロポセン

アントロポセン

  • 蓮沼執太フィル
  • J-Pop
  • ¥2200

 

39.Louis Cole「Time」
[UnitedStates, Jazz/Electronic]
Flying Lotus率いるBrainfeederからリリースされたLAのプロデューサ/ドラマーによる最新作。MVにもなった多幸感溢れる「When You're Ugly」、Dennis Hammをゲストに迎えた「Trying Not To Die」、極上のチルアウトチューン「Phone」などなどジャズをベースとしつつもキャッチーなメロでビルボードチャートインしてもおかしくない最高のポップスアルバム。

Time

Time

  • ルイス・コール
  • R&B/ソウル
  • ¥1500

 

38.CRCK/LCKS「Double Rift」
[Japan, Jazz/Pop]
dCprGの小田友美とものんくる角田隆太 (現在は脱退) らによって結成されたクラックラックスの3rdEP。各々が超絶スキルを持ったアベンジャーズ的バンドであるにも関わらず、テクニカルさだけではなく「」「No Goodbye」など完成度高いポップスとしてパッケージングできる手腕に唸らされる。今年もジャズをベースに持つバンドの活躍が目立ったが特に複数バンドを掛け持つBa.越智俊介の活躍っぷりはすごかった。

Double Rift

Double Rift

  • CRCK/LCKS
  • J-Pop
  • ¥1600

 

37.04 Limited Sazabys「SOIL」
[Japan, MelodicPunk]
日本武道館をソールドさせるほどの人気となった名古屋の4人組による3rdフル。先行シングルの「Squall」「My HERO」を筆頭に相変わらずのメロディメイカーっぷりで思わずガッツポーズしたくなる。やっている音は小さなハコを余らせていた5,6年前から何も変わっていないし地道にライブを続けた結果今の人気に繋がっているというのはシンプルにうれしい。

SOIL

SOIL

 

36.BTB特効「SWEET MACHINE」
[Japan, TalkBox]
LUVRAW & BTB名義でのリリースでも知られているトークボクサーBTBがBTB特効への改名後初のフルアルバム。JINTANAがギターで参加した1曲目「Overnight 39 Jah」めっちゃ踊ってるMVも印象的な「ワイルドに最高の未来へ」などアーバンでメロウなロコハマシティクルージングを演出してくれた一枚。

SWEET MACHINE

SWEET MACHINE

  • BTB特効
  • エレクトロニック
  • ¥1800

 

35.Bearwear「DREAMING IN.」
[Japan, Indie]
Dead Funny Records所属、東京の2人組インディロックバンドによる1stEP。Ano(t)raksコンピ「DIE IN POP」の1曲目に収録されたことでも話題となった「e.g.」を筆頭に「I'll take you anymore」などインディポップおじさん大歓喜の7曲を収録。Dead Funnyということで近々福岡にも来てくれるのではないかと期待。

 

34.Luby Sparks「Luby Sparks」
[Japan, Indie]
現役大学生5人組インディ/ギターポップバンドによるデビュー作。狙ってる感半端じゃないジャケットから最高だし、自分たちの武器とやりたいことを理解してそのままヴィジュアルに落とし込めている「Thursday」のMVも素晴らしい。イントロからガッツポーズな「Tangerine」などなどネオアコ/シューゲイズっていうトレンド真ん中じゃないところで素晴しいバンドが出てきたなと思ったら本作リリース直後にボーカルが脱退。新体制のボーカルもど真ん中 (ビジュアル的に) なので早くライブを観てみたい。

Luby Sparks

Luby Sparks

 

33.SUSHIBOYS「350」
[Japan, HipHop]
EVIDENCE脱退が発表され現体制ラストとなったアルバム。YouTuber手法でしょうもないことを一曲使ってやりきるスタイルが話題を呼んだ彼らだが、本作でもそのノリは変わらずむしろ悪化したように感じる。Trap (罠) ビートで「遊戯王」っていう曲をやっちゃうニコラップでやるようなノリをいまのフィールドでやること自体で勝ち (マンガ読んでないとわからない用語ばかりで笑う)。スタイル的にはかなりポップス寄りだが確かなスキルを持つFARMHOUSEの客演が増えてきているのもうれしい傾向。


32.MONDO GROSSO「Attune / Detune」
[Japan, Electronic]
満島ひかりをフィーチャーして話題を呼んだ前作「何度でも新しく生まれる」の続編的アルバム。バンドサウンドだけではなくメロウなエレクトロでもこれだけ歌えるのかと驚かされるBiSHアイナとの「偽りのシンパシー」が本当に素晴しいけれど、なんだかんだ世代的には「One Temperature」のBIG-O (SHAKKAZOMBIE) の "I'm back" というフレーズで秒で泣く。

 

31.LANDMVRKS「Fantasy」
[France, Progressive/Metalcore]
デビュー作「Hollow」がここ数年でも随一の大傑作だったマルセイユのプログメタルコアバンドによる2nd。叙情性を感じさせつつラップのように捲し立てるシャウトなどテンションが振りきれてた前作に引き続き、大好物なリフから入る「Scars」やモッシュパートを詰め込んだ「False Reality」、さらにフランスの女性シンガーをゲストに迎えた「Alive」ではど直球なバラードも用意するなど成長を感じさせる内容。来年4月には初来日公演も決定したので楽しみ。

Fantasy

Fantasy

  • LANDMVRKS
  • メタル
  • ¥1600

 

30.FIVE NEW OLD「Too Much Is Never Enough」
[Japan, Rock/Pop]
神戸のポップバンドによるメジャー1st。国内でいえばポストI Don't Like Mondays.とでも言うような、ビルボード直系ポップバンド路線の完成度高いアルバムに。「Sunshine」「Ghost In My Place」などの王道チューンに加えて、「By Your Side」ではゴスペルライクなサウンドに手を出したのにはびっくり。ブレイク前夜の踊Foot Works起用にも驚かされた。ZESTONEコンピに曲を提供していたポップパンク路線の頃から知っているだけにもっとブレイクして欲しい。

Too Much Is Never Enough

Too Much Is Never Enough

  • FIVE NEW OLD
  • ロック
  • ¥2000

 

29.校庭カメラガールドライ「New Way of Lovin'」
[Japan, Rap/Electronic]
Stereo Tokyoの椎名彩花ことぱちょとんぱ加入後初のEP。サウンド的にはmasayuki kubo (AVV) によってエレクトロ/トランス色が強くなり、さらにメンバーのスキルも過去最高の体制で仕上がった一枚に。MVにもなった「Slowly World」、無限大サバイバルダンスタイムな「No limit Dance」、先行シングル2曲に加えツヴァイからの人気曲「Lonely lonely Montreal」も再録という充実した内容。未完成さを売りにするのではなくエレクトロ寄りアプローチのポップラップとして新たな一手を提示した内容のこのEPでもっと広がるのではと感じただけにたらちゃんの卒業は残念。

 

28.パソコン音楽クラブ「DREAM WALK」
[Japan, Electronic]
関西を拠点に活動するDTMユニット初の全国流通盤。マルチネからリリースした「PARK CITY」や、「ふめつのこころ」リミックスを経た本作は、90sなシンセ使いが耳に残るノスタルジックな一枚に。トークボックス使いのクールな「Virtual TV」が耳を引くけれど、人気曲「OLDNEWTOWN」再録や「Inner Blue」のノスタルジックなサウンドが泣けてくるし、無人のショッピングモールで流れていそうな「Beyond」からはどこか空虚さも感じる。ゆnovation、in the blue shirt、Batsuなどなど関西のこの界隈は本当におもしろい。

DREAM WALK

DREAM WALK

  • パソコン音楽クラブ
  • エレクトロニック
  • ¥1500

 

27.JYOCHO「互いの宇宙 e.p」
[Japan, Progressive/Pop]
ex-宇宙コンビニだいじろーのプロジェクトによる最新EP。元々マスロック/ポップスなアプローチをみせた前身バンドでの方向性は維持しつつ、heliotrope猫田ねたこのボーカルやフルートによってさらに繊細で温かいサウンドに。オーケストラルポップ感ある「pure circle」も、90sエモ感ある「ユークリッド」も本当にツボだし、「互いの宇宙」で始まりそれにリンクする「互いの定義」で締める構成も素晴らしい。宇宙コンビニから彼を知っている人はもちろん騒いでいるけれど、アニメ主題歌となったことでもっと広い範囲で (シーンは違えどMaison Book Girl好きなどにも) 評価されることになるであろう一枚。

互いの宇宙 e.p

互いの宇宙 e.p

  • JYOCHO
  • J-Pop
  • ¥750

 

26.chelmico「POWER」
[Japan, HipHop]
憧れのRIP SLYMEと同じレーベルunBORDEからメジャーデビューしたチェルミコ1stフル。新たなアゲ曲となったオケチアやパーシー讃歌「E.P.S.」、U-zhaanとの「デート」などメジャーでもやりたい放題な内容だが、相変わらず三毛猫ホームレスと抜群の相性をみせる「Good Morning」「午後」、ラストに改めて聞くラヴィゾバでちょっとなきそうになる。サンクラで「ラビリンス '97」を出したときからブレイクすることはみんな知っていたしむしろ遅いくらいだ。

Power

Power

  • chelmico
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1800

 

25.VaVa「Virtual」
[Japan, HipHop]
CREATIVE DRUG STOREのラッパー/トラックメイカーによるEP。BIMやサニーデイ・サービスの作品に参加で話題となったタイミングでリリースされた本作はCDSらしいキャッチーさとトラックの多彩さでさらに注目度を上げた一枚に。「現実 Feelin'on my mind」でのブラス使いトラックはKID FRESINO「Retarded」提供へも繋がり今年の彼を象徴するトラックに。今年3枚のEPをリリースする多作っぷりも◎。

Virtual - EP

Virtual - EP

  • VaVa
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1200

 

24.JABBA DA FOOTBALL CLUB「FUCKING GOOD MILK SHAKE」
[Japan, HipHop]
オマケから1000円でリリースされたジャバ新作。雑念ライクなフックとMVの虜感がモロな「MONKEYS」や話題の菊花賞を迎えた「THINK RICH, LOOK GOOD」、とどめはTempalay革命前夜ネタの「月にタッチ」とトピックスを詰め込みまくったEP。その中でもDJ FUMIYAが作りそうなチル曲「MIDNIGHT GOOD GOOD MOOD」が特にお気に入り。本業?のアパレルにも力を入れ出したり、メロコアmeetsヒップホップ路線へシフトしつつあったりと来年も楽しみ。

FUCKING GOOD MILK SHAKE - EP

FUCKING GOOD MILK SHAKE - EP

  • JABBA DA FOOTBALL CLUB
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥750

 

23.tofubeats「RUN」
[Japan, Pop/Electronic]
前作「FANTASY CLUB」が好みすぎたというのもあり、がらっと方向性の変わった先行曲「ふめつのこころ」「RIVER」はいまいちピンと来なかったが、アルバムを通して聞くと単曲で聞くのとは異なる鳴りをしてくる。焦燥感溢れる「RUN」で始まり、裏タイトルとも言える「NEW TOWN」から「ふめつのこころ (SLOWDOWN)」へ向かう後半の流れが本当に素晴らしく、アルバムというフォーマットの必要性を改めて感じさせられた。そして毎度リリースの度に楽しみにしているインタビューもあい変わらずおもしろい。

Run

Run

 

22.冬にわかれて「なんにもいらない」
[Japan, Pop]
寺尾紗穂、伊賀航、あだち麗三郎によるバンド冬にわかれての1stアルバム。寺尾紗穂ソロとは異なりメンバーによる作曲や躍動感あるポップチューンも揃えつつ、あい変わらず彼女が物語る愛と喪失は聞き手に凄まじい余韻を残す。「なんにもいらない」「優しさの毛布で私は眠る」を聞くと、どうしても寺尾紗穂の存在を知った曲「楕円の夢」を思い出してしまう。彼女の歌声とピアノとか弱いサックスに乗せ綴られた言葉は、あの曲のように心の真ん中をすり抜けどこにも刺さらずぐるぐると体の中を駆けめぐっている。

なんにもいらない

なんにもいらない

  • 冬にわかれて
  • J-Pop
  • ¥2000

 

21.kZm「DIMENSION」
[Japan, HipHop]
YENTOWNの最年少ラッパーによる1st。Chaki Zuluのビートを筆頭に全体的に重くダウナーなサウンドで統一された一枚。"覆水盆にはNever Come Back" というパンチラインが最高な「WANGAN」、YENTOWNからAwichを迎えた「Sect YEN」「Midnight Suicide」、5lackをもダウナーな世界に引きずり込んだ「Wolves」、また夜中にから騒ぎが始まっちゃうJJJによる「KOKORO」などなどトピックだらけ。そのままダウナーで終わると思いきや、ラストに同世代BIMとのMr. Brightsideネタ「Dream Chaser」で明るく締めるところがニクい。

DIMENSION

DIMENSION

  • kZm
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥2000

 

20.STUTS「Eutopia」
[Japan, HipHop]
今や星野源のバックでMPCを叩くまでになったMPC奏者/トラックメイカーSTUTSの2ndフル。彼の人柄に引き寄せられた現行シーンを代表するゲスト陣に目を惹かれるがビートはあくまでオーソドックス。特に序盤「Dream Away」~「Pursuit」までは懐かしのジャジーヒップホップを彷彿とさせる。後半は彼らしいワールドミュージックテイストあるビートを並べつつ、ラスト「Changes」で今年はこれを超える曲は出てこなかったなと思わせる大名曲を置いてくるところがさすが (Fla$hBackSの今と昔を映したMVも本当に本当に素晴らしかった)。2枚続けてこれだけのアルバムを作り上げたとなると次作からはいよいよポップシーンへとアプローチか。

Eutopia

Eutopia

  • STUTS
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1800

 

19.長谷川白紙「草木萌動」
[Japan, Pop]
19歳の現役音大生SSWによるデビューEP。この音を何と形容すればいいのか……ジャズやブレイクコアを通過したカオティックなポップスとでも言うような高速で駆け抜ける重ねに重ねた打ち込みの上を涼しげに歌う彼の歌声が妙に清々しい。MVにもなった「草木」、完全にブレイクコアな「毒」、7分半の大作「它会消失」にYMOのカバー「キュー」など25分を高速で駆け抜けていく。2019年はまず草木萌動を超えるところがスタートラインになりそう。

草木萌動 - EP

草木萌動 - EP

  • 長谷川白紙
  • J-Pop
  • ¥1500

 

18.DE DE MOUSE「be yourself」
[Japan, Electronic]
デデマウス7thアルバム。セーラー服の吉田凛音が多摩の街を歩く「be yourself」のMVや、TOKIYAによる女の子のジャケットなどが印象的なように、フレンチハウスや現行エレクトロ感も詰め込んだ甘酸っぱくフレッシュなアルバムに。このアルバムの方向性のキーとなったという「back to love」や、若干アリムラみのあるサンプル使いもおもしろい「charmed」などデデマウス印な民族ボイスを封印し新しいものを取り込みつつ楽しさを追及したような充実作。パルテノン多摩で行われたパルTAMAフェスで老若男女問わず楽しそうに踊る姿を見て "こういうのがやりたかったからこのアルバム作ったんだよ!" というMCがすべてを物語っている気がした (あの日のデデさんは本当に楽しそうだった)。

be yourself

be yourself

 

17.踊Foot Works「odd foot works」
[Japan, HipHop]
今年ブレイクしたバンドで真っ先に浮かぶのが彼ら。ヒップホップともポップとも違う絶妙なバランスのサウンドで一気に駆け上がった4人組の1stフル。今年何回ライブを観たか思い出せない。気持ち良くビートが変わるメロウな「NDW」や、各所でかかりまくったキラーチューン「Bebop Kagefumi」、Orphansライクな「正論」などなど9曲30分弱でコンパクトに駆け抜ける。ネットラップでアーバン或るPecori名義でやっていた時代から知っていただけにこのような形でブレイクしたのはびっくり。

odd foot works (2018)

odd foot works (2018)

  • 踊Foot Works
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1600

 

16.SUPERORGANISM「Superorganism」
[UnitedKingdom, Lo-fi/Pop]
18才の日本人Oronoがヴォーカルを務める8人組多国籍ポップカルチャージャンキー集団によるデビュー作。"私のことサイコパスだって思ってるでしょ?" なんて一文から始まる「Something For Your M.I.N.D.」、「Everybody Wants To Be Famous」では "みんな有名になりたいばっかりで恥じらいなんてものはありはしない" なんてチクリと刺してくる俯瞰したコミカルな歌詞がおもしろい。その中でもローファイなサンプリングポップと化した「SPRORGNSM」が最高すぎる。年明けに来日ツアー福岡で観るのが楽しみ。

 

15.Nulbarich「H.O.T」
[Japan, AcidJazz]
おれたちのナルバリッチョ2ndフル。デビュー以降コンスタントにリリースを続ける彼らだが今までで一番意欲的かつ充実した作品になったのでは。先行曲「ain't on the map yet」、前作からの「It's Who We Are」辺りはJQ印なポップスがさらにブラッシュアップされてて言うまでもなく最高だけど、珍しくフロア向けな「Zero Gravity」、ネオソウル「Supernova」、壮大なロックチューンとなった「Heart Like A Pool」などの新機軸がことごとく素晴らしく、今後の展開にも大きな期待を抱かせる一枚に。

H.O.T

H.O.T

  • Nulbarich
  • ロック
  • ¥2100

 

14.Post Malone「beerbongs & bentleys」
[UnitedStates, HipHop]
Rockstar」が大ヒットしたUSのラッパーによる2nd。ラップアルバムと呼んでいいのか悩ましいほど7割方歌っている (それもカントリーの質感に近い) ため賛否両論を呼んだアルバムではあるが、ポップスとしても非常に完成度の高い一枚。「Psycho」「Paranoid」「Spoil My Night」「Better Now」などあげればキリがないがとにかくフックの気持ち良さが耳に残るし、完全に歌ってるだけの「Stay」が人気を集めているのもおもしろい。彼やLil Peepなど最近の白人ラッパーはビジュアル含めかなりバンドの影響を受けた逸材が多いし、白人ラッパーが今はラップミュージックの濃度を薄めておもしろくしているように感じる。

beerbongs & bentleys

beerbongs & bentleys

  • ポスト・マローン
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1000

 

13.神門「エール」
[Japan, HipHop]
純文学HIP HOPと称される神戸出身のラッパー (今も鹿児島在住?) による9thアルバムは、彼と出会ったセルフタイトル作を彷彿とさせるようなバラエティ溢れるアルバムに。街中で見かけた優しさの光景を描く「光景」だけでも十分彼らしさが溢れていて泣きそうになるが、めんどくさい思考を巡らせる「土産」や「スイッチ」などこんなリピートしづらい曲作ってどうするんやと思いまた笑ってしまう。評価の低かった近年の作品について向き合う「泥寧」や現在進行形のラブソング「夫婦」、チラ裏感すごいラスト「半径」までユーモアを混ぜつつ生きづらそうな不器用さがにじみ出た彼のこういうラップが聞きたかったんだと思いながらリピート。封印していたライブ活動も解禁、年明けようやく彼のライブを観ることができるのが楽しみ。

エール

エール

  • 神門
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥2000

 

12.さとうもか「Lukewarm」
[Japan, Acoustic/Pop]
入江陽プロデュースの岡山在住女性SSWさとうもかの2nd。「Lukewarm」の "恋をすると人間になっちゃうってママの言ってた事は本当だね" のような突然日常から異世界へ飛ぶような独特の世界観が本当におもしろいし、鶴岡龍 (LUVRAW) をゲストに迎えた「最低な日曜日」での少しファンタジックな淡い描写も素晴らしく、どこか危なっかしいもたっとした歌い方も聞いているうちに心地よくなってくる。結局今年は彼女のライブを観ることが出来なかった。彼女にとって今の世界は生ぬるくて楽しくないのかもしれないので、どこか遠くへ行ってしまう前にちゃんとライブを観ておかないと。

Lukewarm

Lukewarm

  • さとうもか
  • J-Pop
  • ¥1650

 

11.maco marets「KINO」
[Japan, HipHop]
福岡出身、現在は東京を拠点に活動するラッパーによる2ndアルバム。目覚ましの音で始まり、先行リリースされた「Hum!」「Summerluck」など彼らしい落ち着いたテンションの曲が並ぶアルバムは、眠たい目をこすりながら出勤するようななんてことない日々のスキマにそっと寄り添うように、生活をナイスに彩ってくれる。珍しく女性シンガーとの絡みのある「Who You Are」を聞くと彼の幅広い友好関係を活かしたアルバムも聞いてみたいと思ったり (次作を早く作りたいと言っていたので)。

KINŌ

KINŌ

  • maco marets
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1800

 

10.KM「FORTUNE GRAND」
[Japan, HipHop]
トラックメイカーKMがボーカルディレクションにKLOOZを迎え共同で作り上げた1stフル。Trapを軸としつつ哀愁を感じるサウンドが並ぶ本作はXXXTENTACIONを筆頭とするエモラップの文脈で語られることも多いが、それだけに収まらないトピックスと国内ラップにおいて今後の基準となるようなアルバムに。特にWeny Dacillo、Taeyoung Boy、Lui Huaの三者を組み合わせたエモーショナルな「Distance」は絶妙なタイミング含め後々キーとなるであろう一曲。もうひとつの先行曲「Superstar」でのRENE MARSや、続く「24/7」でも自由自在なフロウをみせるACE COOL、18歳のラッパーKvi Babaなど次世代のホープを揃えつつ、締めは田我流という抜け目ない構成は文句なし。国内ラップの次を見据えつつ誰が最初に抜け出すかという緊張感が漂うピリッとしたアルバムは久しぶりな気も。

FORTUNE GRAND

FORTUNE GRAND

  • KM
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1650

 

09.Sen Morimoto「Cannonball!」
[UnitedKingdom, Pop/Jazz]
シカゴ在住のコンポーザーによるデビューアルバム。88risingが彼をピックアップしたことでも話題に。サックスを軸に現行ジャズを再構築したような「Cannonball」、「This Is Not」では日本語詞を取り入れつつ後半でアッパーに展開したり、変則的なネオソウル感ある「How It Feels」など音の隙間の作り方からはポストロックのアプローチに近い部分もあり、そこにベースとしてジャズとヒップホップがあるように感じる。Dirty Projectorsが引き合いに出されるのも納得。この最高のタイミングで観れたSummer Sonicでのライブも素晴らしかった。

Cannonball!

Cannonball!

  • Sen Morimoto
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1500

 

08.KID FRESINO「ai qing」
[Japan, HipHop]
年末はいつも化け物みたいなアルバムが出るが今年はこれだった。バンドサウンドと融合した前作「Salve」、スティールパン変拍子ビートな先行曲「Coincidence」やSeihoとのコラボなどから予想できたように、バンドサウンドからハウスまで国内ラップにおいても異質な実験的サウンドが並ぶアルバムに。サウンド面の詳細な説明は彼のインタビューを読むのが早いが、Somewhereのイメージから脱却させ新たなアプローチをみせたフレシノバンドによる「Nothing is still」とケンモチヒデフミによるFla$hBackS「Way too nice」が本当に素晴しい。いつか彼はラップをやめるのではと思わせる言動を度々みせてくるが、ラップという表現からの脱却の一路としてこのアルバムが生まれたのだとしたら本当にとんでもない才能だ。

ai qing

ai qing

  • KID FRESINO
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥2000

 

07.SIRUP「SIRUP EP2」
[Japan, Soul]
小袋成彬率いるTokyo Recordingsプロデュースの「Synapse」が話題となった大阪出身のシンガー/ラッパーの2nd EP。Sing & Rapを自称するだけあり歌とラップを行き来するスタイルとフック作りのうまさで完全に今年大ブレイク。今夏のフロアアンセムDo Well」は言うまでもなく最高だが、「Maybe」ではちゃんと現行フロウの譜割りで乗せつつ、「LOOP」ではメロウにオールドスクールな乗せ方をする器用さと、歌⇔ラップのスムーズさが気持ち良すぎる。

SIRUP EP2

SIRUP EP2

  • SIRUP
  • R&B/ソウル
  • ¥1200

 

06.Brasstracks「For Those Who Know, Pt. II」
[UnitedStates, FutureBrass]
NYのブラス職人Brasstracksによる前作Pt.Iから1年弱でリリースされたPt.II。本作でもグラスパーをゲストに迎えつつChance The Rapperのバックコーラスを務めたThirdstoryを2曲でフィーチャーと万全の布陣だが、何と言っても「Moments」がド名曲すぎた。チャンス以降ブラス主体のビートが溢れかえっているが改めてフォロワーを寄せ付けないクオリティと素晴らしい多幸感。11月の初来日ツアーも本当に最高だった。

For Those Who Know, Pt. II - EP

For Those Who Know, Pt. II - EP

  • Brasstracks
  • R&B/ソウル
  • ¥750

 

05.Tom Misch「Geography」
[UnitedKingdom, Pop/Jazz/HipHop]
2016年に「Crazy Dream」、2017年に「South Of The River」で話題を集めたロンドンの若きコンポーザー/ギタリスト トム・ミシュのデビューフル。J DillaErykah Baduに影響を受けたネオソウル/ニューチャプター系のサウンドをベースに、彼特有のギターフレーズを前面に出して構築した最高のポップスアルバム。サックスをフィーチャーした先行曲「Water Baby」や、合間に軽快なディスコ曲やギターのみのバラードを盛り込んだりと自由な発想で作られた構成がかなり良い (Isn't She Lovelyカバーにもびっくり)。Summer Sonicでのライブもイントロが流れるたびに歓声があがりBeach Stageのロケーションも相まって本当に素晴らしかった。

Geography

Geography

  • Tom Misch
  • エレクトロニック
  • ¥1500

 

04.88rising「Head in the Clouds」
[Asia, HipHop/R&B]
Keith Apeなどのフックアップでアジア最重要レーベルとなった88risingのレーベル名義アルバム。88risingといえばHigher BrothersやRich BrianによるTrapのイメージがあるが、今年を代表するサマーチューン「Midsummer Madness」を筆頭に日本人シンガーJojiやインドネシアの女性シンガーNIKI参加曲が秀逸。他にもShoot Danceでも知られているBlocBoy JB参加の「Peach Jam」、Verbal参加の「Japan 88」などトピックスも豊富で初のレーベルアルバムとして文句なしの一枚に。Higher BrothersはSummer Sonicでもモッシュとシンガロングが起きるほどに盛り上げていたし、各々のソロアルバムも充実した内容で来年もアジアのシーンは熱くなりそう (来日ツアーに行けないのが残念)。

Head in the Clouds

Head in the Clouds

  • 88rising
  • R&B/ソウル
  • ¥1500

 

03.HONNE「Love Me / Love Me Not」
[UnitedKingdom, Electronic/Soul]
ロンドンのエレクトロ・ソウル・デュオHONNEの2ndアルバム。アップテンポな昼とメロウな夜の二面性がテーマという構成になった全曲シングルみたいな上質ポップアルバム。おれたちのTom Misch参加の「Me & You」がまず最高すぎるが (彼のギターは一聴するだけでわかる)、ノルウェーのAnna the North参加「Feels So Good」や、夜フェーズの「Location Unknown」「Shrink」がわりとアッパーでコンセプトが迷子だったりしつつも全曲素晴らしすぎて文句言えない。フィジカルリリースを日本限定で実施、レーベル名がTatemae Recordingsだったり、1曲目の入りから "Say hello to Tokyo" だったりという親日っぷりも好感度高いし、彼らの音楽性も日本にフィットしている。しかし本当に最近のロンドンはすごい……来日組だけでもTom Misch、Superorganism、Cosmo Pyke、Rex Orange Countyなどなどロンドンを中心にシーンが動いた2018年だった……。

 

02.tipToe.「magic hour」
[Japan, Pop]
"みんなで青春しませんか?" がコンセプトの、等身大センチメンタルアイドルtipToe.の1stフル。メンバーでいられる期間に3年の制約を設けたり、プレゼント用として同じ内容のCDを同封したり、ピアノインストやアンプラグドのリリースなどおもしろい仕掛けを用意しつつも圧倒的な楽曲完成度でノックアウトしてくる。パワーポップ×アイドルソングのような「特別じゃない私の物語」で始まり、エレクトロポップからギターロックまで多彩なサウンドを取り込みつつ一貫してセンチメンタルな質感を維持する。特に「クリームソーダのゆううつ」から「夢日和」までの流れは、(今となっては主流ではなくなった) 王道のポップスが詰まりすぎて悶絶した。本作の次にリリースされた「blue moon」では夜をテーマに少し大人びた幻想的なサウンドへもアプローチしさらにその刹那性を強く感じた。家と学校の間の狭い世界、君と私だけで完結する狭い世界。このアルバムで描かれる狭い狭い世界は、広い世界を知ってしまった後も青春のやり残しを続けてしまう大人になれなかった僕たちにはとても眩しい。

magic hour

magic hour

  • tipToe.
  • J-Pop
  • ¥2200

 

01.折坂悠太「平成」
[Japan, Pop/Folk]
折坂悠太という名前を今年何回聞いただろうと思った。久しぶりに "天才" としか称されない才能が現れ、久しぶりに "名盤" としか語られないアルバムが出た。元年に生まれた彼が生きた時代はすべて平成の物語であり、その物語はとても明るいものではなく漠然とした不安や閉塞感が漂う。地震津波などの具体的な出来事などもワールドミュージックやわらべうたに乗せ詩的に歌いきった。坂道を駆け降り、細く暗い道に出てしまう未来が見えていたとしても、"幸、おれたちに多くあれ" と歌う言葉に、このアルバムの象徴ともいえる「さびしさ」を楽しそうに歌う彼の姿に、平成の終わりとその先にみえる微かな光を感じてしまう。平成の最後を締めるに相応しい傑作。

Heisei

Heisei

  • 折坂悠太
  • J-Pop
  • ¥1800